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InterSystems Supply Chain Innovation Forum 2021 - SCM4.0とサプライチェーン全体最適 - 物流クライシスからの脱却 InterSystems Supply Chain Innovation Forum 2021 - SCM4.0とサプライチェーン全体最適 - 物流クライシスからの脱却
 
  • セミナー 第1部

    サプライチェーン4.0実現への近道

    インターシステムズジャパン株式会社
    ロジスティクス営業部 部長

    佐藤 比呂志 氏

     

    データプラットフォームでデータの可視化を

     インターシステムズジャパンの佐藤比呂志ロジスティクスビジネス営業部長は、「サプライチェーン4.0実現への近道」と題して講演。

     佐藤氏は日本の物流システムについて、「スピードと正確性においては『世界一』といっても過言ではない。これは物流関係者の努力の賜物」と評価した上で、「ドライバーや倉庫従事者など、見えないところに過大な負荷がかかっている。今後労働力が減っていく中で、なんとかしないと維持ができない」と指摘。

     その上で、「『物流はコストではなく立派な付加価値である』と発想を転換し、価格が上乗せできるような考え方はできないか」とし、サプライチェーン全体に視野を広げることを提言する。

    インターシステムズジャパン株式会社 ロジスティクス営業部 部長 佐藤 比呂志 氏

     サプライチェーン1.0は「輸送の機械化」、2.0は「荷役の機械化」、3.0は「物流管理の機械化」を指す。「日本ではこの段階でITの活用が格段に進み、世界に誇れるほどに洗練されたシステムが構築された」。

     そして、4.0は「省人化、自動化」。「操作や作業、そこで必要となる判断を人ではなく機械やコンピュータが行うことを目指し、AI/ML(機械学習)の活用が期待されている」。これを実現するために、「何よりも重要なのがデータ」だという。

     この4.0と似た概念として同氏は、航空機の管制塔システムを手本とした「サプライチェーン・コントロール・タワー」を紹介。物流業界内のシステムが、管制塔となるシステムを介し、それぞれに連携した状態を目指すことを提唱する。

    サプライチェーン・コントロールタワー

     そのために、「まず行うべきはデータの可視化、つまりデータベースの整備」と説明。「データの種類ごとに複数のデータベースを活用する場合は同期の問題もクリアしなければならない。処理スピードやデータ量を満たせる性能のものを用意する必要がある」。

     また、「さまざまなシステムと連携するための仕組みや、障害発生時のリカバリー体制の構築、さらに、AIが機能するためにはクリーンデータを準備する必要もある」とも。

     同社ではこうした課題を解決するべく、高速かつ大量のデータ処理、データの記録と分析の一体運用、各種システムとのスムーズな連携などを実現するデータプラットフォーム「InterSystems IRIS Data Platform」を提供。AI/ML機能を簡単に実装できるような仕組みづくりにも継続的に取り組んでいる。佐藤氏は、「データ管理に関するややこしいことは我々にお任せいただき、事業者のみなさまはその道のプロとして、本業である物流の課題に取り組んでほしい」と締めくくった。

  • セミナー 第2部

    PALTACにおける物流クライシスへの挑戦

    株式会社PALTAC
    専務執行役員 情報システム本部長

    前田 政士 氏

     

    守りから攻めへ

     PALTAC専務執行役員情報システム本部長の前田政士氏は、「PALTACにおける物流クライシスへの挑戦」と題して講演を行った。

     中間流通業として年間35億個を取り扱う同社。メーカー1000社、小売業は400社、店舗数にして5万店との取引があり、生活必需品を安心・安全に提供する社会インフラ企業としての役割を果たしている。

     全国16か所にRDCを設置するほか、小型のケースセンターや受託事業を行う大型センターも展開。トータルで5万SKUの販売計画・実績をデータベース化し、メーカーの適正在庫量、小売の在庫管理・陳列作業までをコスト合理化の対象として分析。その上で、「流通そのもののコスト削減にとどまらず、俯瞰的な検証に基づいて、メーカー・小売双方の生産性向上の実現を目指している」という。

     労働人口の減少に伴う省人化・省力化の推進、商品廃棄やロスの削減、ペーパーレスへの切り替えなど、「中間流通業を取り巻く環境は厳しさを増している」と語る同氏。配送についても、ドライバー不足への対応が急務となっており、「個別ではなく、根本的な対応をメーカーや小売と共同で対策を進めていく必要がある」と危機感を募らせる。

    株式会社PALTAC 専務執行役員 情報システム本部長 前田 政士 氏

     同社は、内閣府主導による「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」内に設置された「スマート物流サービス」プロジェクトに参画。 日用雑貨業界の情報インフラ企業であるPLANET社が業界の標準化をめざして提供する「ロジティクスEDI」を活用し、メーカーと卸売業のデータ連携に基づく物流効率化・共同化の効果を検証している。

     PALTACから同EDIを通じてメーカーに商品の発注情報を送信。メーカーから運輸事業者に出庫指示データが連携され、出荷処理の後、同社に商品が発送される、というのが基本的な流れ。ここに新たな取り組みとして事前出荷データ(ASN)を追加し、入荷内容を事前に把握することで、入荷作業での時間短縮、検品レス、伝票レス、パレット受払の自動化などを検証している。

    入荷・格納の図

     送信されるASNは、車両単位に商品情報を紐づけ。同氏は「将来的には車両・パレット単位での紐づけを検討している」とし、「この運用により、入庫時の検品作業が、従来の発注番号単位の照合から車両・パレット単位に変更され、大幅な作業軽減につながる。納品精度が確認できた段階で検品レスに移行できれば」と展望する。

    全国で入荷予約システムを導入
    システム基盤は『IRIS』

     また、同社では、センターへの納品時間や接車バースの予約ができる 自社開発の入荷予約システムを全国のRDCに導入。「AWSのパブリッククラウド上に環境を構築し、インターシステムズ社の『IRIS』をシステム基盤として採用している」。

    待機時間が3分の1に

     同システムの導入により、「待機時間が3分の1に短縮された」という。「到着時刻が指定できるので、到着までの時間調整や待機時間の削減が可能。ドライバーには接車バースが通知でき、誘導の自動化も図れる」。

     また、EDIとの連携により、検品レス、受領書のペーパーレス化なども実現。「ドライバーは荷下し作業後すぐに出発でき、大幅な時間削減が可能となる」。

     庫内作業についても、「パレット単位のデータ連携をもとに、スキャンレスに転換していきたい」とし、将来的にはRFIDや画像認識技術によるスキャンレスに加え、AGVなどによる自動搬送も検討している。

    RDC図

     今後は、「既存センターでの継続的な改善とともに、新物流モデル活用の新センターを設置し、出荷キャパの拡大」をめざす。実際、2019年に開設されたRDC埼玉では、「バラピッキング作業で、従来の人員で2倍の生産性を実現」。自動化やロボット化の推進で、危険作業や負担が多い作業の軽減も行っているという。

     同氏は、「全国の高効率物流網を強化・拡大し、ホワイト物流の推進、配送課題の解決に向けた取り組みを続けていく」とし、「そのためにはシステムの強化が欠かせない。セキュリティの強化、基幹システムの刷新、デジタル人材の育成などを進め、守りから攻めへ転じ、急速に変化する現場ニーズに対応していきたい」と強調した。

  • セミナー 第3部

    ロジスティクスと車両管理
    ~IoT&車両の動態管理で業務効率化を実現~

    株式会社ビズベース 代表取締役

    安井 穂 氏

     

    車両運行サービス『ACO』で業務効率化を支援

     ビズベースの安井穂社長は、「ロジスティクスと車両管理 IoT&車両管理で業務効率化を実現」と題して講演。

     安井社長は、現在の物流業界の抱える課題として、ドライバー不足や高齢化による輸送品質の低下、物流網の非効率さ、物流・商流データの標準化が進まないことなどを挙げた上で、「コロナ禍でEC物流が拡大し、混沌さに拍車がかかっている」と指摘。

     一方、「クラウド技術の発達はめざましく、高齢者でも業務でスマホを支える環境が整ってきている」としながらも、「WMSなど倉庫内の個々の業務のIT化は進んでいるが、サプライチェーン全体の最適化はできていない」と現状を分析する。

     同社では2016年からIoTデバイスを利用した車両運行サービス「ACO(アコ)」を提供。同サービスは、インターシステムズ社の「IRIS」で構築され、IoT制御や地図連携、動態管理が行なわれている。

    株式会社ビズベース 代表取締役 安井 穂 氏

     車載器から発信される15秒ごとの定期通信で、車両のデータをリアルタイムに取得し、位置や軌跡を管理。走行・停止、アイドリングなどの状態も判別する。また、急ブレーキや急加速、急ハンドルなどの危険運転時にはイベント通信として、その都度、データが送信される。収集データの分析も可能だという。

    8〜12%の燃料費減

     同社長は同サービスについて、「危険運転が多いドライバーへ適切な指導をすることで事故を減らすことができ、修理費用や保険料の削減につながる」と説明。「安全管理や車両管理はもちろん、業務効率化やコストカットに貢献できる」。さらには、「導入するだけでも抑止効果がある」とし、運転意識の向上やアイドリングストップが進んだことで「導入企業の燃料費は8ー12%程度減っている」と付け加える。

    ACOの図

     WMSと連携し、トラックの待機時間の削減をめざした実証実験も展開。同サービスの到達圏を利用したジオフェンス機能をもとに以下の業務効率を実現している。

     物流拠点から30分圏内にトラックが入ると、WMSにトリガーを発信。トリガーを受け取ったWMSは、そのトラックに積み込む荷物のピッキング開始を作業員に指示する。次に10分圏内にトラックが入ると、WMSはそのトラックが入るべき空きバースを予約する。

     これにより、「トラックは待機することなく空きバースに入ることができ、バースに到着したら用意された荷物をすぐに積むことが可能。待機時間を極限まで減らすことができる」。

     同様の拡張版として、配送ルート作成サービスも提供。ドライバーが持つスマホの画面に、ACOクラウドの中で作成されたドライバーごとの配送ルートを表示。配送先の情報も確認することができ、管理者側では予実管理も可能だ。「配送ルートの効率化により、新人ドライバーの育成や急な欠員時の対応などに寄与できる」。

     同社では、今後もIoT技術を活用し、物流業界のさらなるDX化へ向けて貢献していく構え。

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