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射界
2020年3月9日号 射界
2020年3月23日
トリックアートをご覧になったことがあるだろうか。人の目の錯覚を利用して、平面のものを立体的に見せる不思議なアートのことだ。見る角度で印象の変わる作品や、自身で錯覚を楽しむ作品が多い。全国各地にトリックアートを楽しめる場も多く、筆者も我が目を疑ったことが度々ある。
▲見る角度によって変わるものは、何もトリックアートだけではない。そもそも、立場によって人間は見る景色が違う。経営者が見ている景色と従業員が見ている景色では、まったく違っていると言ってもいい。しかし、それをそのままにしておけば、現場に社長の思いは伝わらない。それを近づけるためにも「相手のことを思いやる心」が必要だろう。
▲日本では「埴輪」と言うが、中国では「俑」と言う。埴輪は古代、殉死をなくすために作られたと言うが、俑を見た孔子は「俑を初めて作った者はきっと子孫が途絶えるだろう」(孟子)と言ったと言われる。人そっくりの俑を墓に入れるということは、やがて人間に殉死をさせることになりかねないと言うのだ。見る角度によって答えが正反対になっている。
▲日本には「あばたもえくぼ」と言うことわざがある。惚れ込んだ目には欠点さえも美しく映ると言う例えだ。これこそ究極のトリックアートとも言えなくもない。しかし、錯覚した目では真実を知ることは到底かなわない。何事にも正しい見方をすることは大切だろう。しかし、トリックアートを目の錯覚として楽しむだけの心の余裕もあっていい。
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