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物流ニュース
ANA 「アジアナンバーワン」めざして国際貨物を本格展開
2009年1月5日
全日本空輸(ANA、山元峯生社長、東京都港区)が国際貨物事業に大きな新しい流れをつくるのを目指し、本格的に動き出した。
同社が発表した「2008─11年度中期経営戦略」に掲げているのは、「沖縄・那覇空港をハブとした国際貨物基地構想、大型貨物機の導入、エクスプレス事業への進出」の3点。「アジア・ナンバーワン」を目指し、ANAが国際航空貨物業界で本格展開を図る。
「高い目標でチャレンジする」と語る殿元氏
「国際貨物分野においては後発なので、非常に高い目標を掲げてチャレンジする」と意気込みを語るのは、ANAの上席執行役員で貨物本部副本部長の殿元清司氏。国内線旅客事業が中心であったANAは85年、成田・グアム線の開設を機に国際線旅客事業に参入し、大きな躍進を遂げた。今度は、国内・国際旅客事業に、貨物事業という新たな柱を加え、三本柱の強化で経営収益を上げていく考えを明らかにした。
足元は世界的な金融危機のあおりを受け、景気後退局面にあるものの、同社の調査によると、アジアを中心とした国際貨物需要は、中長期的に見れば、10年後には約2倍もの市場規模が期待できる有望なマーケットであるという。
年が改まり、いよいよ来年春には、成田国際空港の滑走路延伸による離発着枠の増加、秋には羽田空港の国際化による離発着枠の拡大──という好条件がそろう。同社内では、国際線旅客機として役割を果たしてきた中型機・ボーイング767―300ERを、世界で初めて貨物専用機に改修し、コスト競争力の高い運航体制を実現、強化している。
この機材の強みを生かしたビジネスモデルが、早朝・深夜でも発着できる沖縄・那覇空港にフレイター(貨物専用機)のハブ基地を設け、アジア主要都市と日本の主要空港を早朝・深夜便で結ぶという構想だった。ANAはこのサービスを「業界内で、一番遅くまで待つことができ、一番早く到着地に着く国際便」と自負する。
「羽田や成田の離発着枠が増えれば当然、世界中の航空会社も参入し、競争は激しくなる。その時までに従来型の『エアポートからエアポート』というモデルだけではなく、『荷送人から荷受人』までの一貫輸送、時間的価値を重視し、ITを駆使した貨物の追跡機能の活用で、タイムリーにドア・ツー・ドア、工場の生産ラインから次の生産ラインにお届けする新しいサービスを提供できるシステムを確立しておかなくてはならない。このようなサービスの需要は、これから大きく伸びるだろう」と殿元副本部長。
この一貫した輸送体制ネットワークを構築するため、08年4月に同社と日本通運、近鉄エクスプレスの3社が中心となり、共同出資でオールエクスプレス(吉冨紹道社長、東京都大田区)を設立した。
那覇空港では、ANA国際貨物ハブ空港の施設として現在、約2万8000平方mの専用上屋を建設中。09年秋には竣工予定だ。さらに、現在6機の専用貨物機を、ハブ空港オープン時までには中型貨物機10機程度に増やし、事業規模は国際線週約百便、国内線週約50便を予定している。年間の貨物取扱量は、約40万tを目指す。「貨物ハブ空港と言っても、積み替え基地としてのスタートとなる。そこから物流加工などの物流産業が沖縄で育てば、地域活性化への貢献にもなる。チャレンジする意味はある」。
中期経営戦略の最終年度、11年度の貨物事業の売り上げ目標は、全体で2000億円超と現在の約2倍にしたいという。「スピードとクオリティにこだわった、夜遅く出しても翌朝に最速で着くサービスは、荷主が求めるニーズに、より近いものであると考えている。2010年は航空業界にとって変わり目の年となる。その時に諸外国と競争できるよう、今の基盤づくりが重要」と語る。(小澤裕)
■国際貨物基地構想
ANAの「国際貨物基地構想」とは、沖縄・那覇空港へ飛行時間で四時間以内のアジア圏の各主要都市から、午後9時─同11時の那覇空港行きの便に貨物を乗せれば、深夜のうちに那覇空港で積み替えられて目的地へ出発し、早朝には目的地空港に到着するというもの。
国際線の発着が可能で、24時間の運用と貨物施設の確保が可能という条件に加え、東アジアの中心という地理的優位性に恵まれた沖縄だからこそ実現可能となった。 -
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