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困った 脳梗塞予備軍 高齢ドライバーのリスク
2013年6月20日
脳梗塞のリスクを抱えたドライバーに、会社はどんな対応を取ればいいのだろうか――。高齢ドライバーへの依存度が高まるトラック運送業界で近年、こうした悩みに直面する事業者が増えている。数年前、関西地区でドライバーが業務中に意識を失い、運び込まれた医療機関の担当医師は診断書に「一過性の意識消失発作」と記したうえで、ドライバー業務に支障はないとの判断を示したことが同社の経営者を困惑させた(本紙既報)が、それと似たケースがこのほど、西日本エリアの運送会社でも発生した。今回の病名は「無症候性脳梗塞」で、医師は診断書に通常業務への支障はないと記している。
「軽度の脳梗塞には一時的に意識障害などの症状が現れるタイプもあるが、無症候性脳梗塞のように自覚症状が出ないほうが厄介」と話す脳神経外科のドクターは「病状には個人差がある」と前置きしながら、「加齢によってリスクは高まるが、40歳を過ぎれば30%、50歳で50%というような高い割合で軽度の脳梗塞が見られるというデータもある」と指摘。60歳オーバーの現役ドライバーが珍しくなくなった運送業界にとっては、看過できない問題といえるだろう。ただ、無症候性脳梗塞というのは、それだけで直ちに加療を要するというレベルのものではないという。「むしろ?一病息災?と受け止め、自分の体調を気遣う契機にできる…というポジティブな理解でいいと考える。症状を重くしないために生活習慣を改善することも大切だし、そういう意味では運転業務に就く関係者が早めに自己チェック(検査)することの意義は大きい。行政(厚労省)のHPを活用すれば、簡単な問診で脳梗塞の危険度がチェックできる」(ドクター)と話す。
しかし、まったく発見されなかった人に比べれば、重度の脳梗塞を引き起こす可能性は確実に跳ね上がるというだけに、他人を巻き込む重大事故と隣り合わせのドライバーにとっては間違いなく気になる材料。「現在の食生活を見直すとともに、休憩時に有酸素運動を採り入れるなど、日常生活で健康増進を意識してほしい」という専門家のアドバイスを生かしたい。
一方、「通常の業務に支障はない」と診断書に記されても、「予備軍」を抱えた会社の経営者とすれば放置できないのが率直な思い。そうかといって安易に退職を求めることもできず、「(ドライバーとして採用した以上は)異動によって収入が減るような担当職務の変更も慎重にしないと問題になるケースがある。まずは医師も加え、この先の健康管理体制なども含めて話し合うことが大切」(労働安全衛生に詳しいコンサルタント)と説明する。
高齢者が被害者となる交通事故が全国的に急増しているが、その一方で、職業ドライバーとして働く高齢者の場合は重大事故の加害者となる可能性も秘めている。国交省は今春から、各地のト協が実施する「トラック・ドライバーの健康診断補助」の原資として交付金の使用を認めたが、背景には依然として過酷な状態が続く労働環境と、ドライバーの高齢化といった事故リスクの高まりがあることは否定できない。そういう意味では今後、無症候性脳梗塞についても受診を促す助成制度を検討する必要があるのかもしれない。
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