-
射界
2016年1月18日号 射界
2016年1月22日
自分を正確に知ることは簡単のようだが難しい。それ以上に自分を知って理解してくれる人に出会うのはもっと難しい。意気投合して肝胆相照らす仲ともなれば、「まずは一献…」となって酒を酌み交わす。相手を知る近道として酒食を共にするのが自然な流れのようだ。この流れは洋の東西を問わず、民族の違いもない。
▲主役となる酒は、「礼を正し」「労をいたわり」「憂いを忘れ」「鬱をひらき」「気をめぐらし」「病を避け」「害を消し」「人と親しみ」「縁を結び」「人寿を延ぶ」の十徳があると中国の古書は伝える。わが国でも「酒は百薬の長」とも称し、その程度を超えなければ健康にもよいと教える。酒が入れば誰とも打ち解け、和やかな雰囲気を醸し出し、場が和むのは言うまでもない。時には独り酒も悪くない。▲だが、油断すると酒の害は容赦なく人を襲う。徒然草の作者、吉田兼好は「百薬の長と言えども、万(よろ)づの病いは酒より起これ」と戒めている。誰も見ていないからと、「ちょっと一杯」と、ハンドルを握る前に軽く一献。この独り善がりが大事故の引き金になってはタイヘンだ。道交法違反以上に、社会に及ぼす影響は大きい。「飲んだら乗るな」だが、なかなか後を絶たない。
▲イギリスの桂冠詩人、バートランド・ラッセルは「酒は一時的な自殺だ。飲酒がもたらす幸福は、単に消極的なもので、不幸の一時的な中断にすぎない」と警告している。ここしばらくは飲酒する機会が多い。ある哲学者がいう通り、「酒が入ると、英知が出ていく」ので、ハンドルなどの操作がコントロールできなくなる。飲酒の効用を生かすも殺すも、あなた次第と心に銘記したい。
-
-
-
-
「射界」の 月別記事一覧
-
「射界」の新着記事
-
物流メルマガ