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射界
2018年10月22日号 射界
2018年10月29日
深山幽谷とまではいかなくても、山間を流れる渓流は美しい。これからは紅葉が映えて自然美を際立たせるだろう。水の流れは岩をかみ苔石に当たってしぶきを上げる。そんな流れが渓流を彩り、見る人を魅了する。ふと水面に我が身を映したい思いに駆られるが、激しい水流は頑なにそれを拒む。
▲人は皆、前後の脈絡なく歩んできた道を振り返りたくなるものだ。流れをとめた水面のような澄んだ気持ちになって、静かにあれこれ考える時間を持つ。歩んできた道で幾多の経験を積み、多くの難関をクリアしてきた歩みの中で、価値観の違いや見解の相違から厳しい決断を求められたことも多かった。経験や年齢を重ねて増え、いまなお深省することが多い。
▲語り継がれる古典の多くは「人は流水に鑑みるなくして、止水(しすい)に鑑みる」と教えているが、自分勝手な論理や主張で強引に突っ走ってきたこともある。組織体の一員としてバックの権威を誇示し、無理を強いてきたことも数多い。流水に身を委ねて止水状態での正常な判断ができなかった。今になって止水の大切さを知る。遅きに失した思いが強い。
▲思い上がりや既成観念に囚われていては「流水」と同じように気持ちに波が立ち、正しい決断ができなくなる。雑念を取り払った「止水」の心境になって、はじめて正しい決断ができるのではなかろうか。政治家がよく口にする「明鏡止水」と言う言葉。言うはやさしいが行うは難し…である。軽々に口にすべきでないが、それを契機に実践するよう期待したい。
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