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ブログ・高橋 久美子
第411回:運賃勝負では生き残れない
2019年8月12日
それでは、「人で選ばれる」ためには一体、どんな人であるべきでしょうか。
実は、これからの時代は「選ばれる人」の要素も変化していきます。私たちが若い頃はバブルの時代でした。「物質の時代」と言い換えてもいいと思います。1984年にはマドンナの「マテリアル・ガール」という曲も大ヒットしました。この頃は結婚相手の理想の男性の条件として「高身長・高収入・高学歴」の「3高」という言葉が流行したのを記憶している人も多いのではないでしょうか。まさに「スペック勝負」の時代だったわけです。
ところが、所有に価値がなくなった今、価値観はシフトしてきました。
AIの進化により、いずれ効率化が進み、全ての物の価格は限りなく無料に近くなっていきます。そうなると当然ながら、お金に対する考え方もさらに変わっていきます。収入が高いとか、何かを知っているとか、何かを持っているとか、何かができるとか、そういった機能面や、外付けの条件では、人は人を選ばなくなってきました。物質に囲まれた生活よりも、持たない生活の方が、価値があるという考え方になってきたほどです。
心の時代、感性の時代、何を持っているか? よりも、どんな「在り方」か? が、問われる時代にシフトしつつあります。人としての内面がフォーカスされる時代です。
そうなると、信頼できる人、好きになれる人、フィーリングが合う人、共感できる人、という理由で、人は人を選ぶようになります。
結婚相手に限った話ではありません。取引上でも同じことが言えます。ひょっとしたら、この意見には反論もあるかもしれません。
「いや、そうは言っても、やっぱり運賃で選ばれるんじゃないか」
確かに、今は、それがあなたの率直な実感かもしれません。でも、ちょっと冷静に現実を見てみましょう。本当に「運賃」だけで選ばれているのでしょうか? あなたの会社よりも高い運賃なのに、新規取引が後を絶たない会社を、あなたもご存じのことと思います。
逆に、あなたがご存じの同業他社の中で、価格が低いことだけで勝負している会社はどうでしょうか。おそらく、経営状態は安定せず、人の問題を抱えてはいないでしょうか。
当然ながら、経営セオリーから見ても、コストリーダーシップ戦略を取れるのは業界シェアを有する大企業だけです。小さな会社が運賃勝負に手を出したら、自ら寿命を縮める道を選んでいると言わざるを得ません。
今後、スペックだけで勝負しようとする会社は間違いなく苦境に立たされることになります。いち早く時代の波を読み、スペックではない「人で勝負」する会社が、これからの時代に生き残っていきます。
この記事へのコメント
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筆者紹介
高橋 久美子
あなたの会社が儲かっていない本当の理由
規制緩和により、夢大きく独立開業した運送会社の社長たち。その社長さんたちが、規制緩和後の業界環境の変化により、今、とても厳しい状況に立たされています。経営不振の影響によるメンテナンスの不備も懸念され、それが引き起こす悲惨な交通事故も、連日ニュースで報道されています。このような危機的状況を受け、中小規模運送会社の根本的な経営改善と救済を目的として発足したのが、私たち「全国中小規模運送会社 経営改善推進委員会」です。
全国中小規模運送会社 経営改善推進委員会 -
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