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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(292)人材育成について(8)A社の事例(2)

    2020年6月8日

     
     
     

     「自分は課長に向かない。職場を投げ出した以上辞めるのがスジだ」と言って、工場長を困らせる。工場長曰く「頭を冷やして、よく考えなさい。相手はパートの女性ですよ。今さら辞めて、どうするんですか。一生職人のままでいくのですか。ここで頑張ってもらわないと、あなたの成長はないよ。この壁を乗り越えなさい」。いくら言っても「辞める、辞める」の一点張りのB課長。工場長「今さら辞めてどうするんですか。待遇も悪くなるよ。一兵卒で働くということになるよ」。B課長「覚悟しています。ぼくも40歳、今ならどこか、雇ってくれます。求人チラシを見ても、雇ってくれそうなところがあります。このまま5年、10年と会社におらしていただいても、お荷物になるだけです。工場長も、ぼくの能力をわかっているでしょう。ぼくは字も満足に書けない男ですし、課長になる柄ではないのです。だまってどうか円満に辞めさせて下さい」。泣きながら訴えてくるB課長に対して、工場長も困ってしまった。

     

     ふと見ると、B課長の奥さんも泣いている。工場長は、はっとひらめくものがあった。奥さんとじっくり話をしてみようと、内心ひらめいた。

     工場長「奥さん、今日のところは、これで帰りますが、明日は休みです。一緒に家族で食事しましょう」。B課長夫婦と一緒に食事をすることになった。はじめは、B課長のグチをじっと聞いた。グチを聞き終えて工場長は、奥さんの気持ちを聞いた。

     奥さん「わたしの気持ちは、お父さんがそんなに悩んでいるなら、好きにしてほしいと思います。私はついていくだけです。でも、うちのお父さんが、課長になった時は、うれしかったですよ。学問もないのに、まじめだけが取柄でコツコツ働いてきて20年、お父さん本当によかったね、と思いました。赤飯をたいて喜び合いました。でも、今は悩んで辞めると言っています。本当は、私は悔しいですよ。こんなことに負けずに、乗り越えていってほしいです」。奥さんの思いは、せつせつと伝わってきた。やはり、負けずに頑張ってほしいのだ。

     工場長「奥さんの気持ちをよく考えなさい。明日、工場へ出社して、途中で帰ったことを製造現場の部下一人ひとりにお詫びしなさい。この壁を乗り越えて一歩大きくなるんだ」。奥さんは言った。「お父さん、やっぱり辞めずに頑張って下さい。一人息子が、お父さんを見ています。まじめにコツコツ働いているのを尊敬しているんですよ。それが、こんなことで辞めたら、きっとガッカリします。お父さんには、どんなことがあってもついていきます。でも、私の気持ちは頑張ってほしいのです」

               (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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