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    経営再生物語(317)人材育成について(16)A社の事例

    2020年12月14日

     
     
     

     機械相手に一人で仕事というイメージのあるソフト開発業界で、元気のあるA会社がある。A社は社員100人ばかり、年商20億円。社是は「言ってみたの?やってみたの?」何か困ったことに直面すると、余計なことを言わないで「まずやってみようよ」との意味である。そして合言葉は「インディアン」に「鞍馬天狗」。インディアンは嘘をつかないし、鞍馬天狗は正義の味方。自覚し合った社員が、信頼し合いながら一体となって仕事をしていこうとの思いが、インディアンと鞍馬天狗に込められている。

     

     「社員一人ひとりが楽しく健康的に働けるように、お互いに暖かみを感じ響き合えるようにと『朗働』『響働』という言葉を使っています。自主性は尊重していますが、困っている人を助けることも大いにやっています。例えば仕事が上手くいかない、残業で難儀している、となれば皆で助言する。したがって、無茶な残業もないという具合です。仕事をお金に換えるのでなくて、『響働』する精神的な喜びに換えていくことが大切だと思います。経営者とか、社員という感覚を持たないで、皆が一丸となって朗働し会社を発展させていくことに喜びを見いだしていくことです」(A社長の言)

     A社では、業績が上がったら利益の3分の1は期末手当として成果配分している。「朗働」や「響働」という考えは、感動を呼び起こす。この感動ということが、人材育成の力になる。

     A社での実践は、人材育成にとって価値観の重さを感じさせてくれる。単に社員を道具や機械の一部として、給料というエサでこき使うなかで、使命感をもった人材は育成されるであろうか。価値観は人を正当な意味で感動させるものでなくてはならない。

     ある病院での、絶望と思われている意識障害の植物人間化している患者への看護実践は、感動を与える。それは、諦めずに、粘り強く働きかけて、生命の大切さを自覚していくという医療の価値観があるからだ。A社においても、嫌々働いて苦役として捉えるのではなく、朗らかに、そして共鳴して響き合って働く。この姿は感動させる。

     したがって、人材育成には信念がいる。人の成長が喜びであり、使命であるとの信念がいる。

     人の可能性を信じ抜くところから、人材育成の種が生まれ、やがて芽を出し、感動の大輪が開くのだ。     (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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