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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(337)小集団活動のすすめ方(3)―2
2021年6月7日
社長・店長・経理部長の相談
社長は、切り出した。「このままでは、借金が増えるばかりや。いっそのこと店仕舞いして、マンションでも建てて楽に生きたい」
店長が口を開いた。「苦労してここまできたのにマンションとは情けない。先代に顔向けできません。家業をやめるのは親不孝ですよ」
社長「それではどうしたらいいんだろうか。借金の保証は、全て私がしている。つぶれたら元も子もないんだ」
経理部長「マンションを建てることになったら私達はどうなりますか。路頭に迷うばかりです。この年で、いまさら職を探すなんて情けない」
社長「みんなにはすまん。けど楽になりたい」
店長・経理部長「社長は楽になっても、わたしらは楽にはなりません。マンションは反対です」
A社の激動の日々
社長の廃業宣言は全社員に伝えられた。伝え方は一片のメモである。「経営不振のため、店仕舞する」。全社員はビックリした。一瞬言葉を失った。落ち着いてくると腹が立ってきた。社長に対してである。
店長をリーダーとして従業員会が結成され、社長は孤立した。従業員会は社長との話し合いを求めた。このままいけばドロ沼の労働紛争は必至である。おとなしい社員の一人ひとりが社長に対して、不満を述べた。従業員はそれらの不満をまとめて社長につきつけた。その内容は次の通りである。
⑴社長は先代の遺産にしがみついて、仕事よりも対外活動に忙しく身が入っていない。
⑵社長とゆっくり話もしたことがない。
⑶会社を見捨てる前にやることがあるのではないか。このままでは人生を見捨てることになりはしないか。
社長は思いがけない従業員の反発にうろたえた。マンションを建てる前に、労働紛争ではどうしようもない。従業員に「人生を捨てるのか」とまで言われて悩んだ。
社長と従業員は、信頼関係や心のつながりが全くない状況である。いわば先代の残像、遺産でここまできたとしか言いようがない。社長は、孤立して初めて目が覚めた。このままではいけない。なんとかしなければの思いにかけられた。
従業員とのミーティングを始めた。いわば小集団活動のスタートである。社長は「みんなにすまなかった」とまず詫びた。「これからどうしたらいいか、みんな考えていこう」
(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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