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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(346)小集団活動のすすめ方(6)―2
2021年8月23日
営業研修にでてくる幹部は先代からの幹部であった。土地で儲けて全社員に金一封が配られもした。
古参営業幹部は、本業そっちのけで走りまくっている二代目に文句も言わず、実に人が良くて大人しい人たちであるように見えた。
研修が終わりに近づいたある日、3人の古参幹部と一杯のむ機会がめぐってきた。私は日頃、不思議に思っていることを質問した。
「二代目社長は年に何回も海外旅行され、派手にとび回っておられますが、社員はどう思っているのですか」
古参幹部A「私の思いを言わしていただきます。確かに二代目社長は、何してるんかいなと思っています。金一封もいただきましたが、内心なんやと思っています。二代目社長は立派な家も建てて、そのときも幹部総出で新築パーティーを開きました。本当のことを言えば、家を建てるのは、先代にしてほしかった。〝社長よ。まず家を建てるより、社屋を新築にしてからにしてくれ〟と内心つぶやきましたよ。それでもやめずにいるのは、先代に育てていただいたという恩を感じているからです」
私「なるほど。先代の恩があるからですか。どんな恩ですか」
古参幹部A「それは一言で言えませんねえ。そうですね。私が入社して間もない頃、結核にかかりましてね。一年間入院したことがあるのですが、月に一回必ず先代が病院に来てくれて、〝早く治って一緒に働こう〟と繰り返し励ましていただきました。このことは忘れられません。本当にありがたいといつも思っています」
古参幹部B「私も現在の会社が苦しいのは知っています。二代目の道楽に付き合わされてはかなわないと思う時もあります。しかし、なにくそ会社のピンチを乗り切るぞと闘志を燃やしています。その源動力は、さまざまですが、大きい理由の一つは先代への恩です。私が入社したときは会社も小さく、10人程でした。仕事が終わると先代がよく一杯飲ましてくれました。先代も酒好きな人でした。ある時、先代は全く飲まず、ノルマを達成した私に酒をすすめてくれました。〝よくやってくれた。ありがとう〟といって酒をすすめてくれるのです。その時、先代は酒を飲まないので体の具合でも悪いのかと思いました。実はそうではなくて、先代は一人分飲めるぐらいのお金しか、その時、持っていなかったのです」
古参幹部C「私も先代の恩があるからですよ。実は私は幼くして両親を亡くしましてね。結婚の時、先代に助けられました。社内の事務員をしていた女性を妻にしたのですが、最初、妻の両親が猛反対しましてね。もう駆け落ちしかないと思いました。駆け落ち決行の前夜、先代にあいさつに行きました。〝会社をやめます。いろいろありがとうございました〟と言いました。問いつめられて白状しました。すると先代が 〝よし、わしがその両親に会って頼んでくる〟と言ってくれました。実際に正月の2日、北陸にある家内の実家に雪の中、先代は行ってくれました。妻の両親に頭を下げ、親族会議に出てかき口説いていただきました」
3人の古参幹部の先代との心のつながりの深さを表現している。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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