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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(10)口約束で決めてしまい
2011年8月26日
A社長はBドライバーの入社のいきさつについて思い返す。1人でも入れる労働組合が結成される1年前のことである。当時は今よりも深刻なドライバー不足に直面していた。有料の求人広告を出しても、さっぱり反応もない。たまたまBが応募してきた。A社長はロクに履歴書も確認せずに、面談のみで即決した。
「今まで10年もドライバーの経験があるんだね。うちでもやっていけるかい」「はい。やらせて下さい」「それでは明日から来て欲しい」「給料はいくらになりますか」「一応、3か月は試用期間なので、1日9000円でどうか」「9000円はちょっとキツイです」「そうか。それでは1万円でどうか」これで決まりである。ここに反省点がある。1日1万円と口約束で決めてしまっている。残業代はどうなるのか一言も触れていない。A社長としては当然、1万円の中に残業代が含まれていると思っている。さらには休日も決めていない。
ここは雇用契約書を締結することである。1日1万円ではなく、基本給6400円プラス固定残業代3600円といったように、基本給と基準外賃金を明確に区分する。「固定残業代には法所定の時間外手当を含む」や、交通事故のペナルティについても「会社損害金額の10%」などと明記するべきである。口約束は後々揉める元だ。
さらに、履歴書をじっくりと見ることである。Bの履歴書には写真が貼っていない、走り書きのような履歴書である。前職は○○運送会社とある。○○運送会社は、1人でも入れる労働組合と経営者が揉めてつぶれた会社である。当然、Bは労働組合のことを経験しているわけである。
運転免許証についても事故歴、違反歴をしかるべきところで確認すべきだ。Bは違反点数が多く、免許停止スレスレの状態であったことが後日判明する。さらに健康状態も確認することだ。血圧のことやアルコール、タバコについても確認すべきで、これらのこと(前職歴、履歴書、運転免許証、健康状態など)を面接採用シートに記入しておくことである。
A社長は叩き上げの経営者で、記録をするという考えがない。口約束である。口約束を事務を担当する奥さんや配車担当者A氏に「Bが明日から来る。1日1万円だ」と伝える。今までは、このスタイルで何の問題もなかった。実は3か月の試用期間中は社会保険にも加入しない。「いつ辞めるか分からないし、すぐに社会保険に加入しても無駄になるかもしれないからね」。A社長の言葉である。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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