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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(14)平行線の第1回団体交渉
2011年9月22日
「1人でも入れる労働組合」がやってくると、経営者は弱気になったり、うろたえたりするのが普通である。荷主との力関係からすると、「こちらの方が労働組合を作りたいよ」との現実があっても、目の前の「労働組合」の現実が重い。
A社長は、どのように対応したか。とりあえず団体交渉に臨むこととする。上部団体の人の後ろに、労働組合に加入した我が社のドライバーが控えている。A社長は、労働組合の要求には全て「ノー」で答えた。上部団体は2人である。名刺を見ると○○副委員長とあって、大物らしい。大物氏はソフトである。あくまでやわらかい。今まで聞いてきた怖い労働組合のイメージではない。テーブルの上にICレコーダーを置く。「社長さん、私たちは中小企業をつぶそうとは思っていませんよ」「就業規則、給与規定を見せて下さい」。それに対してA社長は、「うちは超零細企業である」「うちは赤字である」。大物氏とA社長の話はかみ合わない。平行線が続く。
すると、もう1人の上部団体の者が口を挟む。「A社長、うちの組合を甘くみてはいけないよ」「お宅の会社は労働基準法を守っていないじゃないか」と、テーブルを叩かんばかりに激しく責めてくる。大物氏のソフトと、もう1人のハードの組み合わせでA社長は責められる。
そこに、後ろに控えていたドライバーらが声を荒げる。「社長、ええかげんにせんか」「社長、交通事故のペナルティー10万円返してくれ」。三方向からA社長は責められる。大物氏いわく、「今日のところは確認だけしたい。労働基準法は守る。労働協約は結ぶ。この2点だけ署名してほしい」。A社長は「ノー」。平行線である。
A社長は団体交渉を経験してクタクタとなる。平行線のまま第1回は終わったが、これからどうなるのか。上部団体の人が言った言葉が頭を駆け巡る。「A社長、全てノーというのは不誠実団交といって法律違反だよ」「このままだと労働基準監督署に駆け込むよ」「運輸局にも行くよ」。A社長は、えらいことになったとつくづく悟る。
労働組合との交渉でストレスが高じて入院したり、時には心臓マヒや脳梗塞で倒れた経営者のことも他人ごとではない。しかも労働組合に加入したドライバーの言動も腹が立つ。「今まで私に逆らったこともないのに、よく色々と言ってくれたな」。A社長はこれから先のことを考えて、夜も眠れなくなる。今まで強気でならしてきたA社長の苦悩は、まだまだ続く。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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