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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(16)送られてきた「通告書」
2011年10月7日
「当職は、○○(以下「通告人」といいます)の依頼により、本通告書作成代理人行政書士として、○○運送(以下「被通告人」といいます)に対し、次のとおりご通告いたします。
通告人は、被通告人に対し、平成○年○月○日から○年○月○日までの期間において別紙1のとおり、労働基準法第32条が定めた労働時間(法定労働時間)を超える労働(法定外時間外労働)として2125時間30分、労働基準法第37条第3項が定めた労働(深夜労働)として758時間の労働をしてまいりました。労働基準法及び労働基準法施行規則の定めに従えば、別紙2のとおりの賃金(時間外手当等)が支払われるべきであるにもかかわらず、既払い分を除き、請求日時点で未だ支払いを受けておりません。これは、賃金全額支払いを義務付けた労働基準法第24条及び第32条の定めた労働時間を超える労働について割増賃金の支給を義務付けた第37条の規定に違反する違法行為です。
したがって通告人は被通告人に対し、不払い賃金の合計額295万8135円につき、労働契約及び労働基準法に基づく賃金請求権を行使するものとし、労働基準法第23条に基づき、本書面到着後7日以内に、通告人指定の銀行口座へ支払うように求めます」(通告書)
A社長の元へ通告書が送られてきた。1人でも入れる労働組合と緊張状態が続いている真っ最中だ。労働基準法第32条、37条、24条、23条と書いてある。不払い賃金295万8135円を7日以内に払えとなっている。組合員は5人なので、約1500万円の要求だ。
お先真っ暗とはこのことである。労働組合には全て「ノー」で突っぱねてきたので、いよいよ労働基準法という法律が全面に出てきた。それにしても2年間分の法定外時間外労働2125時間30分、深夜労働758時間とは、どうやって計算したのか。添付資料によると、ドライバーの申告に基づいて算出している。そもそもA社長は毎月の労働時間は算定していなかった。給料体系は1日○○円と残業代込みで支払っていた。通告書によると、1日○○円÷8時間×1・25×ドライバーの申告による残業時間で計算している。しかもA社には実態に基づく給与規定がない。入社にあたって雇用契約書は結んでいない。口約束である。
「今まで文句を言ってくるドライバーはいなかった。それにしても1500万円を支払えとはどうしたものか」。A社長の強気が一瞬ぐらつく。「こんなことなら、今日限りで運送業を辞めようか…」。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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