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  • ブログ・川﨑 依邦

    一人でも入れる労働組合がやってきた(21)街宣車による抗議活動

    2011年11月11日

     
     
     

     「5人分の時間外手当未払い分1500万円プラス1500万円の計3000万円を出せ」とは、とても払える金額ではない。



     A社長は腹をくくる。第2回の交渉で払えないことをキッパリと大物氏に伝えることとする。大物氏は「このままだと抗議行動をするしかありません」。A社長は大物氏に尋ねる。「抗議行動とはどういうことですか」。第2回の交渉も完全に決裂した。

     すると間もなくのことである。会社の周りが騒がしい。街宣車が大音量のマイクでがなっている。「A社長よ、残業代の未払いを払え!」「これ以上、労働者を苦しめるな!」「労働基準法を守れ!」。いよいよきたかと青ざめる。A社長の気持ちとしては「払えないものは払えない」に尽きる。「3000万円を払うと会社がつぶれる」。

     一方、A社の分会員5人もびっくりしている。「これはどういうことか」。分会員の1人が動揺する。「こんなはずでは…。A社長が謝ってくれて、キチンとさえしてくれればいいのに…」。分会員の1人が言う「キチンと」とは、「残業代の未払い金3000万円は無理でも、せめて○万円でもくれたら」とのささやかな気持ちである。「このままいくと会社はどうなるのか。つぶれてしまうのか」。分会員の1人の動揺が広がる。

     分会員5人のうち、最初に1人でも入れる労働組合に駆け込んだ分会長は別として、他のメンバーに動揺が広がる。抗議行動は、外部の組合員10人以上が週1回くらいのペースで押しかけてくる。A社長は日に日に追い詰められてくる。「このままどこかに逃げようか」「もう1回大物氏に会って、3000万円は無理なのでまけてもらうよう交渉しようか」「まけてもらうとして、どれくらいなら大物氏は納得するのだろうか」。A社長の心は乱れてくる。

     こうした状況が2か月ほど続くと、一つの変化が起きた。5人の分会員のうち、3人がひそかに社長に会いたいと伝えてきたのである。3人の分会員は「もう会社を辞めます。恐ろしくなりました。その代わり退職金ということで○万円くれませんか」。最初に動揺した分会員の1人が、2人の仲間を連れてきたのである。

     A社長は心からびっくりした。抗議行動の嵐が続いている真っ最中に、他でもない分会員3人が会社を辞めると言ってきた。残りは2人となる。心の乱れが落ち着いてくる。じっくりと会社の足元を見直す気持ちが生まれてくる。「もっとしっかりした会社を作っていこう」。A社長の心に変化が生まれる。

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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