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  • ブログ・川﨑 依邦

    一人でも入れる労働組合がやってきた(24)過ぎ去った嵐

    2011年12月2日

     
     
     

     激しかった街宣車がピタリと止まる。分会員は2人となった。そこで上部団体の大物氏とA社長は交渉に入る。



     「1人300万円の残業代の未払分を払え」との労働組合の主張が変化する。このまま会社と対立し続けても不毛である。落とし所がいる。A社長いわく、「1人100万円でどうですか」。大物氏は、「100万円では話に乗れない。200万円でどうですか」。すったもんだの末、1人150万円で話がついた。

     「こちらは街宣車代もいるし、動員代もかかっているしね」。大物氏の言葉である。街宣車を出すにもタダではない。1日○万円かかる。動員代も日当にして1人○千円かかっている。「150万円×2人分の300万円もらっても、経費がかかっているしね」。いわゆる解決金の300万円は上部団体の口座に振り込む。結局、分会員2人の手にした金は1人当たり○万円にしかならない。残りは全て上部団体分である。

     A社長は内心呟く。「これでは元組合員3人の方が手にした金の方が多いではないか。分会員2人は骨折り損のくたびれ儲けではないか」。かくして時間外手当の未払いは結着した。A社長の目の前にいる2人の分会員と上部団体の存在がある。2人の分会員のうちの1人、Cドライバーは内心不満である。上部団体に引っ張られて深く考えもせず入ったCである。「どうも話が違う。300万円もらえる話はどうなったのか」。

     Cは59歳で、まもなく60歳で定年となるのでこのまま残ろうと思い残った。「このまま組合費を払い続けるのも合点がいかない」。Cは独身である。「怖いものはない。家族がいるわけでもない」と勢いに任せて組合に入り、今日まで来た。まさか辞めた元組合員より低い額しか手にできなくなるとは実に無念である。組合に入ってからというもの、周りの同僚ドライバーとはまともに会話すらしていない。形通りのあいさつをしても、非組合員のドライバーとは溝がある。Cは内心呟く。「働きにくいなあ」。

     Cは会社を辞めることにした。最初に組合に駆け込んだBドライバーに告げる。「悪いけど辞めるよ。デモに誘われても出たくないし、俺には向いていない。そうかといって、お世話になりながら組合を辞めて会社に残るのも仁義に反する。会社も組合も辞めるよ」。

     激しい労働紛争の嵐が過ぎ去ってみると、会社には分会員Bだけ。「戦い済んで日が暮れて」の風景である。結局1人だけの分会員。A社長は落ち着きを取り戻す。

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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