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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(34)荷主に応えるしか道はない
2012年2月24日
上部団体のメンバーは「過酷な労働を強いている。謝れ」と責めたてる。A社長は納得がいかない。
A社長に言わせれば荷主との力関係がある。「過酷なので楽にして下さい」と荷主に頼むことはできない。それこそ荷主にしてみれば「何を言っているのか。運送屋の代わりはいくらでもいる」。確かに、労働時間は月間の所定労働時間173時間に対してオーバーしている。所定労働時間で仕事を終えることはできない。所定労働日数は22日、年間休日は1日8時間勤務として法律では105日、1か月平均で約9日の休日である。これだけ休むと仕事にならない。にも拘らず上部団体のメンバーは「有給を与えろ」「有給すら与えていないことについて謝れ」と言ってくる。有給は少なくとも10日欲しいという。105日+10日=115日。1か月約10日の休みとなる。「こうした勤務を続けていて成り立つ実運送業者はいるのであろうか」。A社長の実感である。
確かに所定労働時間173時間を超えることはある。繁忙期には超過時間が100時間になることさえある。1か月の稼働日数も25日、時には27、28日になることもある。「過酷!」と上部団体のメンバーは責めてくる。「謝れ!」とくる。A社長は内心つぶやく。「こうした仕事を続けないと飯が食えない」。
要するにドライバーにも生活できる給料が払えない。荷主ニーズに応えていくしか生きる道はない。そもそもドライバーは「過酷」と思っていない。分会員のドライバーは別として、ドライバー気質として「ハンドル握ってナンボのもんや」である。拘束時間の中には荷主都合による待機時間もある。食事も「かみかみ」のときがある。「かみかみ」とは労働時間にコンビニ弁当やカップラーメンを車の中で食べて、すぐ仕事に取り掛かる状態のことである。
ドライバーの仕事は傍で見ている程「過酷」ではない。「過酷」と思っていたらドライバーの仕事は誰もしない。分会員も労働組合に加入する前は「社長、もっと仕事をさせて下さい。自分はサラ金に借金をしているので稼がないといけないのです」と申し出ている。
上部団体のメンバー曰く「格差がいけない。荷主の態度を改めていかなければいけない。社長、一緒に闘いましょう」。A社長「何を一緒に闘うのか」。上部団体メンバー「社会を変えよう。悪政を正そう」。話が噛み合ってこない。次回の団体交渉では中小・零細企業の経営者として率直に対応しよう。争点となっている再雇用の人事評価の必要性について一歩も引かず団交に挑もう。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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