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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(40)明確な経営方針書
2012年4月6日
経営方針書を「錦の御旗」とするということはどういうことか。
A社長は、これまでの経営の在り方を振り返る。がむしゃらに1日1日精いっぱい働くのみ。ドライバー一人ひとりとの会話も不十分であり、ドライバー教育どころではなかった。ドライバーをどのように教育していくか、どこから手をつけていいのか、どうもイメージが湧かない。「いちいち教えなくても背中で教育する」というのがA社長のこれまでのやり方であった。いわば職人気質である。「俺のやる仕事ぶりを盗んでいけ」との考えである。経営数字も深く把握していない。入ってくるお金と、出ていくお金のことは分かっている。家計簿のレベルである。確かに顧問の税理士はいる。ところが試算表は月末で締めても出来あがってくるのが1か月後である。1か月後となると古新聞を見ているようでピンとこない。まして赤字となると詳しく見る気にもならない。決算をしても、赤字なので法人税を払う必要もない。行き当たりばったりである。経営数字の把握はサッパリで、原始的な資金繰りレベルであった。A社長は手帳に入金予定と支払い予定を書き込んでいる。この手帳がA社長の経営数字である。
社内管理体制をとっても、就業規則や給与規定は未整備である。中身も確かめていない。就業規則モデルをそのまま労基署に届け出ている。従って実態と大きく乖離している。労働時間の把握もしていない。労基署に届け出ている給与規定と、実際の給与明細書は一致していない。「俺が就業規則である」という姿勢がA社長のやり方である。
果たしてこのようなことでいいのか。いわば黒船来航=1人でも入れる労働組合に直面すると、これまでの経営のやり方を見つめ直さざるを得ない。
経営のやり方、方向、進むべき道、経営目標をはっきりさせなければならない。言いかえれば経営方針書の作成である。これで進む=錦の御旗である。
労働組合との対応に追われるあまり、余裕をなくしていた。「反省する」。A社長の言である。「自分には家族を含めると100人余りの生活がかかっている。会社を潰す訳にはいかない。潰せばその100人が路頭に迷ってしまう。ここは腹を据えて会社の進むべき方向性をはっきりしよう」「経営方針書を明確にすることで根本からの経営立て直しを図っていこう」。A社長の決意である。
経営方針書の内容はドライバー教育、収益向上、会社組織の確立を大項目とする。この経営方針書でもって、労働組合としっかり向かい合っていくこととする。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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