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  • ブログ・川﨑 依邦

    中小運送会社の経営改善の記録(15)全ドライバーが辞めると宣言

    2012年10月12日

     
     
     

     「全ドライバーが辞めると言っているとのことですが、明日全体会議をするので、それまでは辞めるのを待つように言ってほしい」と常務に伝える。



     全員のドライバーが辞めるとは穏やかではない。労働組合はいったん消えているが、ぶり返したようなものだ。形は違うがストライキの通告のようなものである。ここで屈して給与改革をあきらめては元の木阿弥である。こうなったら、会社がつぶれても引き下がるわけにはいかない。全ドライバーがいなくなれば、それはその時のことである。辞めると言っているだけで、団体交渉を求めているわけでもない。明日の全体会議は腹を据えて臨むこととする。

     全体会議は乗り切ることができた。「とりあえずやってみよう」ということになった。この局面は、今から考えると経営者の根性を鍛えるものであった。全ドライバーは退職という形を変えたストライキで対抗してくる。経営者は、そうなったらそうなったでやむを得ないと不退転で臨む。労使の心と心の激突である。

     筆者は経営コンサルタント。この時ほど経営コンサルタントと経営者の違いを痛感したことはない。同じ経営がついているが紙一重、天と地の違いがある。経営コンサルタントはクライアント(関与先)のニーズ、状況に応じてアドバイスする。クライアントの状況によってアドバイス内容は異なる。経営成績のいい会社とそうでない会社とではアドバイスの内容も違ってくる。同じ給与改革でも、クライアントの状況によって使い分けている。ありていに言えば、医者が患者に与える薬が、患者の病状によって異なるようなものである。薬=経営アドバイスを受け入れるかどうかはクライアント、特に社長による。社長が聞き入れなければそれまでである。もちろん、?門前の小僧習わぬ経を読む?で経営コンサルタントとしての経験を積んで、経営者の気持ちがよく分かる。時には経営者になった気分でアドバイスをすることもある。しかし、決断するのは経営者である。経営者の仕事は決断することであり、経営コンサルタントの仕事はアドバイスすることである。天と地である。「全員辞める」と突きつけられて「腹を据える」ということの大切さを経営者として骨身にしみる。「なるほど、給与改革を決断する時の経営者の気持ちはこんなものであったか」と思い知らされたものだ。

     平成20年10月の全体会議は無事乗り切ることができた。?至誠天に通ず?との決死の想いで乗り切ることができた。

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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