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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(134)物流子会社の生き残り作戦〈事例B〉(1)
2016年11月25日
〈笛吹けど社員は……〉
物流子会社のB社は苦闘している。親会社は収益状況が悪化しリストラの真っ最中である。B社の運賃収入に占める親会社の比率は40%である。過去10年の営業努力でようやくここまでこぎつけてきた。不況の大波に直面しているB社。対前年比率で30%の売り上げダウン。親会社も苦しいので、「自力で生きてくれ」と通告されている。いわば「つぶれてもかまわない」ということだ。
B社長は、親会社の生産現場でコストダウンに長年取り組み、1年前にB社の社長に赴任した。当初の心境は「良きにはからえ」であった。「どうせ運送業のことはよく分からないし、2年の任期でお役ご免だ」と高をくくっていた。ところが、業績が悪化し、月々赤字が累積する。出血が止まらず、たれ流しが続く。このままいくとあと2年で債務超過になる。資本金を食いつぶすのである。余生のつもりでノンビリとサラリーマン人生を全うするつもりが、足元に火がついてきた。
B社長は悩みはじめた。経営の基本原則の一つは?入るを計って出ずるを制す?である。収入が30%ダウンしているのだから、支出も30%ダウンさせればいいわけだ。ところが、支出を30%ダウンさせるには壁が立ちふさがっている。運送業は労働集約型産業であり、人が中心である。その人が、壁となる。「そんなに簡単に首切りはできないし、給料の30%カットもできない」。B社長の悩みは深まる。親会社も頼りにならない。任期も2年とすると、あと1年しかない。適当に時をやり過ごすことには良心がチクチクする。
B社は物流子会社として、トップは親会社から赴任する。任期は長くて4年、普通は2年。業績がいい時のトップの役割は「良きにはからえ」方式である。プロパー社員に酒の飲み方やゴルフの上達方法などを教えていれば、あっという間に任期が終わる。任期の2年はいわば退職金代わりみたいなものである。プロパー側からしてみれば「うるさく口出ししないトップ」が望ましい。
しかし、不況の大波は従来のパターンを許さない。B社長は決断する。「いつまで社長を続けるか分からないが、社長でいる間はやるだけやってみよう」—-。やる気を出したのである。
プロパー社員は内心、冷ややかである。「いつまで続くか、お手並み拝見」。長年にわたりトップが2〜4年でコロコロ変わってきたので、面従腹背が定着している。実務はプロパー社員が取り仕切っている。トップのいうことには一応「はい」と返事しておけばよい。時が味方する。それに対してB社長は「赤字、赤字」と連呼して笛を吹く。危機感を全面に打ち出したのである。ところが、プロパー社員はソッポを向き、フテ寝を決めこむ。
「赤字、赤字と言われてもピンときません。かえってやる気がなくなるよ。こんなに一生懸命働いても、赤字と言われるとガックリくるよ」
「社長は口を開けば?人件費が同業他社と比べて30%は高い?と言われるが、それだけ働いているよ。給料ドロボーみたいに言われるのは心外だ。それだけいうなら、親会社からの出向組をクビにしろ」……。 -
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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