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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(142)物流企業生存の道〈事例A〉(2)
2017年2月3日
〈20年目、転機と決心〉
創業20年目にして勝負のときが来た。年商10億円前後のとき、11億円の設備投資に打って出る。物流センターの建設である。「一か八か」、会社の命運をかけての勝負。月を追うごとに車両台数を増やし、売り上げを伸ばしていった。昼も夜もない。仕事に対する全力投入—-。いつしか20億円の年商へとたどりつく。そのプロセスで、社員確保のために9億円かけて社員寮をつくる。車両台数は200台を超えていく。急成長である。しかし一方で、急成長はピンチでもある。
A社長が今まで得意としてきた営業開拓活動がままならなくなる。それどころではなくなったのである。恒常的に人材不足となり、人材確保のために走りまわる。毎日面接するほどだ。さらに重苦しいのが資金繰りである。年商と肩を並べる借金の重圧で、借りては返すのくり返し。売り上げ増加に伴う運転資金もひっきりなしに迫ってくる。銀行開拓の日々。来る日も来る日も、資金繰りに追われるのである。
荒波を乗り越え、それでも年商はついに30億円を突破した。借りては返すのくり返しで借入金も20億円ある。特に、ここ2か年はアップアップの資金繰りが続いている。売り上げが伸びているので持ちこたえてきているが、銀行の締めつけはキツい。思うようにスンナリと資金調達ができない。A社長は必死である。資本金の増資もした。取引先に自社株を所有してもらう。役員、幹部にも出資してもらう。いつしか資本金は2億円となる。A社長は40%の株主である。それでも追いつかなくて、知り合いの経営者に協力してもらい、1か月以内の期間で資金のキャッチボールをしてしのいでいく。A社長は生き残りの策を決断し、実行していく。?賃金カットの実施
A社長を含む役員の報酬10%、幹部5%、一般社員4%のカット—-。これらの実施により、月額500万円の人件費ダウンとなる。
?経費の圧縮
長年続けてきた海外への社員旅行を中止する。また、新年互礼会で発表してきた表彰制度の廃止に踏み切る。班長会議(社員数が増えてきたので全体会議をやめて班長会議に変更)を月1回、日曜日から3か月に1回にする。いわゆるコミュニケーション費用の圧縮である。
?創業メンバー役員の降格
創業メンバーの2人が役員となっている。海山越えてきたA社長の同志である。しかし、A社長は決断する。「この苦境を役員として乗り越える力はない。この際、役員を降りてもらおう」。死に物狂いの生き残り策である。 -
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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