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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(169)情と非情のバランスシート〈事例A〉

    2017年9月7日

     
     
     

    〈中小企業の取り柄〉


    30周年の記念パーティーで社員に感謝の涙を見せている社長を見ると、本当は情のある人だと思ってしまう。しかし、ここまでの歩みは非情にならざるを得ない局面もあった。情と非情のバランスである。中堅中小企業の経営者にとっては、このバランスが肝要である。A社長を見ていて、つくづく悟らされる。情だけが先行すると、会社は甘くなり、なあなあになり、だらけてくる。非情オンリーでいくと、ぎすぎすし、ピリピリし、金の切れ目が縁の切れ目となる。さらに言えば、中堅中小企業にとっては、情のウエイトが非情より大きい。

     「厳しくやかましく言っているけど、おやじは助けてくれる。何とかしてくれる」。この温かさが中堅中小企業の取り柄である。

     極論すれば、学歴がなくても親がいようといまいと、少々能力が落ちても「あいさつ」と「うそを言わない」(誠実) ―これさえ、しっかり肝に命じていれば、おやじから捨てられることはない。いわば、深いところでの安心感、信頼感こそ、情と非情のバランスの要と言えよう。

     A社長はそっと、お金を社員に握らせる。「死んだらいつでも眠られる」と言って働きにいかせた運転者が、やっとのことで仕事を終えて会社に戻ってくる。ふらふらである。A社長は彼の帰りをじっと待っていた。A社長も必死である。
     「ご苦労さん。よくやった」と一言褒めて肩を抱く。そして「取っとけ」と言って、お金を1万円握らせる。絶妙の間合いである。まるでドラマを見ているようだ。

     運転者の顔が輝く。情と非情のバランスの輝きである。目に見えないバランスシートの真骨頂。バランスシートは、右側と左側がバランスしている。A社長を見てみると、どうも深いところでは情が重い。目に見えないバランスシートを支えるものは安心感、信頼感ということになる。含み益とでも言えよう。

     A社長のバランスシートは、やはり情が重い。

                       (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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