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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(175)受容と傾聴〈事例A〉
2017年11月3日
〈突然、息子が不登校〉
「イソップ童話集」に、「北風と太陽」という話がある。旅人のマントを取ろうとして、北風がビューと襲いかかるが、旅人は必死になってマントを抱える。「取られてたまるか」。北風との格闘である。マントは取れない。ところが、太陽の出番となって一変する。ポカポカと柔らかく暖かい。いい陽気である。旅人は、自然とマントを脱ぐ。太陽の力である。この童話は、環境の大切さを教えてくれる。環境の力で人の自発性、やる気を高めていくわけである。
A社長は、息子のことで悩んでいた。息子は中学校3年生。この息子が不登校となっている。中学校に入学して1学期を経過したころから、「頭が痛い」などの身体的不調を訴えて、学校を休みだした。
A社長は、仕事に全力を尽くしていて、家庭のことをかまう余裕がなかった。家庭のことは妻に任せっきりにしていた。
「どうしたのか。学校にいきなさい」と、命令しても動かなくなった。初めはそれでも渋々行っていたが、中学1年生の3学期ぐらいから、家にこもりだした。母親との関係も悪化し、母親も悩む。夜も眠れない。半分ノイローゼのごとくなる。
中学2年生になると、生活のパターンも昼夜逆転した。夕方から深夜にかけて、自分の部屋で音楽を聴いたり、本を読んで過ごす。朝方になって寝る。父と息子の格闘が本格化する。たたいてもなだめても、息子はかたくなに閉じこもるばかり。内心は、自らの会社の後継者と期待していたが、これではどうしようもない。
ズルズルと、中学3年生の春となる。悩みに悩んで、父親は精神科医の門をたたく。「うちの息子が家にこもったきりで、どうすることもできません。最近では、家庭内暴力の傾向すら出てきました」
「どうして、こういうことになったのですか」
「息子が言うには、中学に入学して、担任の先生に厳しく怒られたのがキッカケといいます」
「不登校になって、あなたはどのように息子さんに接してきましたか」
「とにかく学校に行け、とたたいてやりました。そのうち、母親にもつらく当たるので、厳しく注意しました。うちの家庭は、息子1人の3人家族です。小さいころから、かまい過ぎたのかも知れません」
うなだれるばかり。精神科医は、子育てについての問題点をさとす。
「過干渉、過保護でしたね。これでは、ちょっとしたことで挫折してしまうタイプとなります」
「それでは、今からどうすればいいのですか」
「まず、今の息子さんの現実を、ありのままを受け入れてください。?受容?といいます。そこから、息子さんの意欲が出てくるのを見守るのです」
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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