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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(191)二代目の決断〈事例A〉
2018年5月1日
〈どうする赤字業務〉
勤続30年のドライバーがいる。年齢は50歳。まじめにコツコツ働いてきて、1か月の運送収入は40万円。2㌧車の配送ドライバーである。荷主からの運賃値上げの圧力によって40万円の運送収入しか得ることができない。
配送の仕事が終わると、倉庫作業の応援をする。1か月で50時間の倉庫作業応援である。1時間当たり1000円として5万円。運送収入40万円と作業応援料5万円で45万円が1か月の売り上げである。それに対して人件費が賞与、法定福利を入れて40万円である。売り上げに占める人件費の割合は約90%。この仕事は赤字である。
どうするか。二つの問題がある。一つは、この仕事が赤字だからといって簡単にやめることができない事情である。この仕事の荷主には、別の倉庫の仕事もあって、全体でみるとギリギリ、トントンの損益になっている。ギリギリ、トントンであるから、経営数字の面からみると撤退ということも考えられる。
しかし、創業以来の荷主であり、儲けさせてもらった歴史もある。現在、赤字スレスレということで、簡単にやめることができるだろうか。その上、この荷主の売り上げは全体で20%のウエイトを占めている。20%の売り上げをダウンさせることはきつい。資金繰りに響いてくる。
もう一つの問題は、対売上高に占める人件費のウエイトが高いことである。それは90%の人件費率の配送ドライバーに象徴されている。創業以来の荷主であるので、勤続年数の長い者が仕事に従事している。「あなたの仕事は赤字です」と通告して、配置転換はできない。この仕事しかできない者ばかりである。いまさら長距離のトラックドライバーになれるものではない。
それでは賃金カットはどうか。50歳の配送ドライバーで月収40万円の水準を、どうとらえるか。勤続30年のドライバーである。世間相場からいって決して高いとはいえないだろう。なにしろまじめで1日も休むことなくコツコツ働いてきたのである。しかし、運送業界の相場からいうと高い。2㌧の配送ドライバーであれば、せいぜい25万円。しかし、15万円の賃金カットを言い渡すことができるであろうか。
「あなたの給料は高い。40万円から25万円に賃金カットします。カット率は約40%です」 ——こんなことが言えるであろうか。それではクビを言い渡すことはできるか。50という年齢でクビになれば、再就職は難しい。30年間ドライバー一筋でやってきた。ほかの仕事はできない。荒波に放り投げるようなものである。ニッチもサッチもいかないとはこのことだ。
(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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