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ブログ・小山 雅敬
第181回:運送会社が絶対に加入すべき保険とは
2020年4月28日
【質問】現在、保険の加入について再検討しています。運送会社が絶対に加入しておくべき保険があれば教えてください。
自賠責保険については当然、加入義務があり、ここでは民間の任意保険について回答いたします。
運送会社と言えば、まず自動車保険と貨物保険ですが、運送会社で自動車の任意保険に加入していない会社は、自家保険で運用が可能な大規模会社ぐらいでしょう。まれに零細企業で任意保険対物未加入の事業者が見られますが、これは論外です。ちなみに自家保険の判断となるボーダーラインは保有車両500台程度が目安です。保険限度額は対人無制限が当たり前。対物は企業規模などにより1000万円程度から無制限までまちまちですが、無制限を推奨します。
貨物保険に関しては、荷主と運送事業者との契約によりますが、やはり付保しておくべきでしょう。これらは運送業を営む以上、最低限の必要経費となります。
なお、最近の傾向からすると、物保険より人保険のほうを充実させる傾向が強く表れています。その背景には、従業員の権利意識の向上による訴訟やトラブルの増加があります。従来は、うやむやに処理されていた労働問題が、すぐに訴訟案件になる時代であり、労災やハラスメントなどの労働問題が起こると極めて多額の損害賠償を請求されるからです。賠償額は1億円を超えることも珍しくなく、10年前の相場から倍増しています。小さな会社は事業の継続が困難になります。
現在、運送会社が絶対に加入しておくべき保険の第一は「使用者賠償責任保険」です。「労災上乗せ保険」「所得補償保険」も検討すべきでしょう。労災認定に至らないケースであっても、民事で損害賠償請求を受けることはあります。そして大事なことは、会社が通常求められる労務管理を実施し、(労災の本人自身さえも)異常を意識していない状況で労災は発生するということです。弊社の関与先運送会社でも、突然発生したことがあります。脳心臓疾患の発症のように、労災に該当するか否かの判定が難しいケースであっても、民事で損害賠償を受けて膨大な慰謝料や逸失利益、休業補償の一部を請求されることがあります。その他「雇用慣行賠償責任保険」についても同様に加入を検討する運送会社が増えています。労働問題の増加に伴い、社員を守る保険(ひいては多額の損害賠償から会社を守る保険)の必要性が高まっていると言えます。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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