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ブログ・小山 雅敬
第182回:配車係に対する業績給の導入方法
2020年5月12日
【質問】現在、ドライバーの給与に業績給を導入していますが、全体の運行効率を上げるために配車係のモチベーションアップにつながるインセンティブを検討中です。配車係に業績給を導入した事例があれば教えてください。
運行管理者、配車係を対象に、実績に応じて変動する業績給を導入することがあります。配車担当者の経験や力量により、運行効率や売り上げ利益が大きく左右され、企業の収益率に多大な影響を与えるため、配車担当者の目標意識向上と目標達成に向けたモチベーションアップを狙いに導入するものです。
通常、配車係に業績給を導入する場合はドライバーとは異なり、売り上げなどの実績数値に歩合率を直接掛けて算出する方法は採用しません。担当部署の運行効率の各指標もしくは売り上げ目標に対する達成率を使って計算する方法が一般的です。
例えば業績給の基本額を月額3万円と設定した場合、3万円に各月の売り上げ目標に対する達成率を掛け、さらに配車係の勤怠実績(所定労働日数に対する出勤率など)を掛けて算出する方法があります。この場合、単純に目標達成率の数値をそのまま使うと貢献度の差が適切に反映されないため、目標達成率の範囲を決めて、それぞれに支給係数(例えば0・8、1・0、1・2など)を設定しておくと、実績貢献度をうまく反映でき、モチベーションにつなげることができます。ただし、配車係に業績給を導入する際には注意点があります。配車係がコンプライアンスを無視して売り上げ実績のみに走らないよう、労働時間適正化の意識づけを制度として組み込むことが必要です。
具体的には法令順守指数を設ける必要があります。担当するドライバーの拘束時間や運転時間、休息期間などの月間実績を見て法令順守度を判断し、配車係の業績給の計算中に修正係数を組み入れる方法をとります。例えば、月間拘束時間293時間超のドライバーが発生した月は修正係数0・9を掛けるなどの運用です。これらの仕組みにより、配車係は自らの役割(効率配車と法令順守)を自覚し、より強い目的意識を持って業務に従事するようになります。ただし、業績給は実績貢献度を直接月額賃金に反映するものであり、あまり過大な手当を設定しないほうが良いです。
運行管理者、配車係の仕事は運行効率・生産性の向上以外に、ドライバーの健康管理や安全指導などの大事な役割がありますので、それらの定性的な要素についても別途、人事考課表などを使って公正に評価し、賞与などに反映するとよいでしょう。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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