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ブログ・小山 雅敬
第175回:「経営理念」をどのように見直せばよいか
2020年2月4日
【質問】最近、求人対策の一環で、経営理念を見直す運送会社があると聞きました。具体的にどのような見直しをしているのでしょうか?
この数年、各地の運送会社から人材確保対策の相談を受けることが大変多くなり、効果的な求人票や求人広告、ホームページの作成方法などを指導していますが、それらの見直しとともに、経営改善コンサルティングの一環で組織や人事賃金制度、経営理念の見直しを同時に行うことがよくあります。経営理念の見直しと求人票の修正により、応募者が顕著に増えた事例もあります。
例えば、ある地方都市の運送会社A社(従業員85人)では、従来、「わが社は高品質の物流を提供し、お客様の発展と社会に貢献します」を経営理念として掲げていました。つまり、取引先と社会に寄与することが会社の存在価値であるとうたっていたのです。A社は最近、経営理念を見直しました。経営理念を①対社員②対社会③対お客様の3本に分けて構成し、対社員に向けた「わが社で働く全ての社員の幸福を目指します」を経営理念の第一に掲げました。現在のように人手不足の環境下では、社員の幸福と満足度の追求を前面に出し、従業員満足を通じて取引先や広く社会に貢献する会社を目指すとした方が求職者や既存の社員の共感を得やすいのです。
会社が社員を大事にし、働きやすい環境を目指すと宣言することで、採用と定着を図ることができます。A社は同時に、当方からの指導に沿って求人票も全面的に書き直しました。事業内容、会社の特徴欄や特記事項欄、備考欄などに経営理念と福利厚生の内容(7つ)、教育研修の内容などをフルに書き込みました。会社が、いかに社員を大事にしているかを強調する内容に一新しました。
すると、今までハローワーク経由の応募がほとんどなかった状況が一変し、求人票を見た40代〜50才前後の求職者からの問い合わせが増加したのです。すぐにドライバー3人の採用が決まり、社長は予想以上の効果に驚き、喜んでいました。
経営理念は単なる文章として軽視されがちですが、求職者から見れば、どのような考え方の会社かを一言で判断できる貴重な情報になります。
経営理念を見直す際のポイントは「社員満足第一」の観点です。この視点で、会社独自の経営理念を再考してみてください。また、新しい経営理念に沿って社員の「行動指針」も3項目程度に絞り、一緒に掲げておくことをお勧めします。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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