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ブログ・野口 誠一
第132回:再起の群像 元社員がくれた好機
2007年5月31日
数年後、Yさんに転機が訪れた。日頃の研鑽が実ったのか、かつての社員が経営者返り咲きのチャンスを持ってきてくれたのだ。
倒産のとき、Yさんが真っ先に取り組んだのは社員の身の振り方である。自分の倒産、丸裸は自業自得としても、社員を路頭に迷わせるわけにはいかない。Yさんは知人や友人、取引先や受注先を駆けずりまわり、社員の再就職先に全力を尽くした。その甲斐あって、全員の再就職が決まったところで、Yさんは経営にピリオドを打った。
チャンスを持ってきてくれた元社員も、そうした再就職組の1人だった。その話によれば、彼の会社の社長が体をこわし、この際、引退して1人娘の嫁ぎ先であるオーストラリアに永住したい、ついては技術系で経営のわかる人に会社を譲りたいが、誰かいないか…とのことだった。
その会社の事業内容は、佐川急便の物流拠点(東北32、関東30拠点)にベルトコンベヤーを納入し、年間契約でその管理、メンテナンスを行うもので、経営内容も堅実、安定しているという。
八起会で研鑽を積みながら、じっとその時を待っていたYさんが、このチャンスを逃すはずもない。とんとん拍子に話がすすみ、Yさんは平成13年、ついに経営者に返り咲いた。すでに経営基盤は確立されていたが、Yさんはその上に新規事業を重ねていった。かつての受注先をまわり、自分の得意分野へ進出、徐々に業容を拡大していった。が、その姿勢はかつての場当たりではない。目標を定め、計画を立てての経営である。倒産と反省と研鑽に学んだ学習効果と言っていい。
目下、Yさんの経営は順風満帆である。技術系の義理の息子(娘婿)を会社に入れ、帝王学の伝授に余念がない。それが倒産で辛い思いをさせた娘さんへの詫びででもあるかのように。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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