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ブログ・野口 誠一
第134回:再起の群像 激動の国際情勢で倒産
2007年6月14日
昭和48年、日本経済をオイル・ショックが襲った。未曾有の不況のなかで、企業は苦しい経営を強いられた。Kさんも例外ではなかった。
本当はこのとき、拡大路線を安定路線に切り換えるべきであったが、創業以来「攻め」に徹してきたKさんには、それができなかった。もっとも、そのバイタリティーがオイル・ショックを乗り切らせた原動力でもあったが、不良債権の増加は避けられず、経営体力は確実に弱まっていった。そこへ青天の霹靂が走った。
昭和54年12月、ソ連が突如としてアフガニスタンへ軍事侵攻、世界に衝撃が走った。この国際緊張が引き金となり、空枠の原料となる地金の金、銀、プラチナなどの国際相場が大暴騰、翌年には一転して大暴落するというハプニングが勃発した。
ちなみに、金はソ連のアフガン侵攻直後、1グラム8500円まで暴騰。が、翌年には4000円にまで暴落している。この急騰・急落によって、貴金属業界は原料高の製品安に見舞われ、倒産が相次いだ。
なかには宝石を持って海外にトンズラする問屋まで現れ、その余波で取引先の十数社が倒産するという不祥事も発生、業界の信用は地に落ちた。金融機関は当然ながら手形の割引に制限を加えるようになり、さらに倒産に拍車がかかった。こうした悪環境のなかで、Kさんは死にもの狂いで経営の立て直しをはかるが、内実はすでに自転車操業、資金繰りに奔走する日々がつづく。
そこへ取引先の4社がバタバタ潰れ、彼も1300万円の不渡りを食らい、それまではなんとか手形のジャンプでしのいできたが、ついに万策尽きる。
ソ連のアフガン侵攻から1年後の55年11月、あえなく倒産した。負債総額は11億円、債権者は124社にのぼった。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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