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ブログ・野口 誠一
第151回:資材部長の不正行為
2008年1月11日
最初に白アリがはびこったのは資材部である。材料の仕入れが異常に膨らんでいく。つれて手形が増え、借金が増えていく。無借金経営できたものが、たちまちこのありさまである。
Eさんは資材部長に、月々の棚卸しをきちんと行うこと、仕入れを計画的に行い在庫を減らすこと、を指示した。が、事態はいっこうに改善されない。そこが、指示すれば改めるもの、と思い込むEさんの甘さである。
それどころか、資材部長に「入手困難な部品や資材を先行手配しているからです」と説明されると、当時はバブルの影響でしばしば資材の入手難に見舞われていただけに、逆に納得せざるを得ない始末。そこにもEさんの甘さがあった。
実態はまるでウソだったのである。資材部長が仕入れ先の担当者とグルになって、不正を働いていたのである。
仕入れ先の担当者に架空の請求書を出させ、資材部長が彼に小切手を渡し、それを現金化して2人で着服していたのである。この悪事はやがてバレるが、Eさんの対応は、そこでも甘かった。
本来なら、ただちに資材部長をクビにするなり、場合によっては損害賠償を求めてもよかったのに、Eさんは厳重注意にとどめた。注意すればやめるもの、改めるもの、と信じ込むEさんの甘さであり、人を見る眼のなさである。
案の定、資材部長の不正はやむどころか、ますます巧妙かつエスカレートしていった。
福島工場を立ち上げたことによって仕入れが二重になり、その複雑さが彼の不正をやりやすくしていたのである。が、それが判明したのは彼の退職後。すでにEさんの倒産は目前に迫っていた。
こうしてEさんは資材部長に食い荒され、あとに残ったのは架空の請求書と、推定2億円余りにのぼる白アリの「穴」だった。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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