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ブログ・野口 誠一
第153回:技術生かし再スタート
2008年1月25日
結局、Eさんの経営は10年でピリオドを打った。負債七億円、資産の4億円はすべて売却し、配当として債権者へまわした。Eさんは無一文となって家族とともに巷へ放り出された。が、無一文となっても生活は待ってくれない。経営者には失業保険もない。
Eさんは、すぐさま仕事さがしを始めたが、時あたかもバブル崩壊のあとで、デフレ不況から失業率が戦後最悪を更新中だった。
いくら技術があるといっても、50を過ぎたEさんに、よい就職口などあろうはずもない。Eさんは時給850円のアルバイトをしながら糊口をしのいでいく。
そんな日々のなかでも、Eさんは技術のことが頭からはなれなかった。根っからの技術屋である。が、その技術がEさんに再起を促し、再びチャンスをもたらしていく。
それは新しい技術との出会いから始まった。アメリカの「LONWORKS」という制御系の新しい技術である。
実はEさんも倒産前、その分野に関して、かなり研究を進めていたが、コスト的にどうしても製品化できずにいた。それがアメリカで製品化されたのである。
Eさんはすぐさまアメリカから資料を取り寄せ、研究に没頭した。そこは技術屋、すぐさまピーンとくるものがあった。Eさんに再びチャンスが訪れたのである。
しかし、二度と倒産するわけにはいかない。Eさんは奥さんを社長に据え、娘さんと、かつての技術系社員3人とともに、再スタートを切った。
自前の特許を洗い直して新製品に結びつけ、LONWORKSに取り組み、目下、Eさんの年商は3億円にまで回復したが、倒産の反省から製造は外注、むやみに人員は増やさない、借金はしない、この3つを固く守り、いまやEさんの経営は順風満帆、高収益体質である。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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