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ブログ・野口 誠一
第155回:事業成功で急拡大
2008年2月8日
美容サロンの成功に自信を深めたFさんは、いつしかチェーン展開を考えるようになっていた。その頃の好調な業績からすれば、決して無理な計画ではなかったし、彼なりに成算もあった。
やがて東京・赤坂に第2号店をオープンするや、彼は毎年2、3店舗のペースでチェーン展開していく。
そして昭和63年、ついにその数、34店舗に達した。しかも事業カンが冴えわたり、オープンするサロンが次々に黒字を計上していく。彼にとっては成算以上の大成功であったと言っていい。
しかし、彼の事業欲はとどまるところを知らなかった。次に目をつけたのが、34店舗で毎日使用する化粧品や美容材料である。
数量的にも金額的にもバカにならない。さらに、サロンのインテリアも定期的に刷新し、イメージ・アップをはかっていかなければならない。彼はさっそく、チェーン店に美容材料を納入するとともに、店内の内装工事を担当する別会社を立ち上げた。
ここに、関連利益をグループ内にとどめる一貫体制がととのったのである。
ここまでの彼の事業手腕は高く評価されていい。が、そのことと経営手腕の有無は別事である。彼もそのことには気付いていた。
この十余年間、多店舗化と関連事業への進出を急ぐあまり、内部の組織固めが手薄になっていることも、急拡大の結果として従業員が水ぶくれしていることも、それを引き締めるために、社員教育を徹底しなければならないことも、わかっていた。
ようやく彼の前に経営者への道が開けたかに見えた。彼もまた内部に目を向け、組織強化に乗り出すかに見えた。が、世はいよいよバブルまっただなか。彼は再び外へ、事業へ目を転じていく。それが倒産の遠因となっていく。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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