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ブログ・野口 誠一
第160回:狂った不動産バブル
2008年3月14日
Hさんは昭和61年、40歳で大手不動産会社を脱サラし、念願だった自前の不動産会社を立ち上げた。
といっても、町の不動産屋に毛の生えた程度にすぎなかった。が、幸か不幸か時はバブル前夜、Hさんもその狂乱にもみくちゃにされることになる。
スタートは他社物件の仲介を中心に、安全運転を心がけた。が、1年後、チャンスが舞い込んできた。埼玉県のある地主が、「土地を提供するから自社物件としてやってみないか。ペイは売れてからでいい」という。
Hさんは、その土地に一戸建てをのせ、売り出しをかけた。全12戸である。そして驚くべきことが起きた。たったの1日で完売である。Hさんは一夜にして億の利益を手にした。
「その夜はいくら飲んでも酔えませんでした」とは彼の述懐だが、それも無理はない。
この成功で自信と資金を得たHさんは、仲介をかなぐり捨て、ひたすら自社物件にのめり込んでいく。が、そのことごとくが図に当たり、開発する片っ端から売れていく。あとに残るのは山のような利益である。
この濡れ手で粟の経営に、Hさんはいよいよ自信を深めていく。が、それは彼の経営手腕というよりも、バブルに負うところが大であったかもしれない。しかし、彼がそんなことに気付くはずもなかった。
やがて、世の中が狂っていく。つれて、Hさんの経営も狂っていく。狂わせたのは銀行である。毎日のように担当がやってきては、「金を借りてくれ。手当てした土地さえ担保に入れてくれれば、金はいくらでも出す」と、まるで借金の押し売りである。
こうして地価が暴騰し、根拠のない土地体制が列島を覆っていく。その犯人は銀行と言っていい。銀行が地上げ屋に化け、不動産バブルを煽ったのである。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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