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ブログ・野口 誠一
第163回:収入なく読書の日々
2008年4月4日
Hさんの誤算は奥さんだった。浜松にアパートを借りて家族を呼び寄せようとしたところ、奥さんが「もう、あなたのところには戻りません」という。
ショックだった。が、羽振りのいいときは家にも帰らず家族も顧みず、遊びまくったあげくが倒産・夜逃げでは、彼としても返す言葉がない。
Hさんは家族を失って初めて、そのありがたさに気付いた。が、すでに遅い。猛烈な孤独感と無力感にさいなまれ、何度も自殺寸前まで追い詰められた。
それを救ってくれたのが読書である。収入のないHさんは1日1食と決めた。が、動けば腹が減る。
腹を減らさずに1日を過ごす方法は読書しかない。彼は図書館から本を借りてきては貪り読んだ。そのほとんどが経済書、経営書の類である。
この奇妙な充電生活は2年余り続いたが、その間に読破した本は軽く1000冊を超えた。
そんな日々のある日、1日1回食べにいく一杯めし屋のじいさんが、「毎日ブラブラしてるなら、おれの車を運転しないか」という。
じいさんが向かったところは競艇場だった。そこには、じいさんの仲間が大勢いた。競艇を知らないHさんは、そこでも本を読んでいるしかなかったが、運転した日はめしと酒がタダになるから不満はない。
そんなある日、じいさんの仲間の1人がすってんてんにやられてしまったらしく、「金を貸してくれ」という。
Hさんが3万円ばかり貸してやったところ、数日後にそのお金を返しにきて、「遊んでいるなら、おれの仕事を手伝わないか」という。
翌日、指定されたスーパーに出向くと、くだんの男が店頭でウナギを焼いて売っている。その売れること売れること、夕方にはズラリ列ができた。
その日の売り上げはなんと21万円だった。これにはHさんも驚いた。が、それが彼の転機につながっていく。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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