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ブログ・野口 誠一
第169回:「人儲け」の実力発揮
2008年5月16日
Kさんが弁護士を頼ったのは夜逃げから3か月後のことである。「すぐに破産手続きだ」と言われたが、一文なしでは「すぐに」ともいかない。
逃げまわりながら弁護士費用や予納金を工面するのは容易ではなく、結局、Kさんの破産が成立し、免責となったのは平成10年、倒産から2年余りも経っていた。
しかし、そこからまたKさんの「人儲け」の実力が発揮されていく。徳には必ず隣りがある。通常は倒産したとたん、周りから人が去って行くものだが、Kさんの場合は逆に集まってきて、寄ってたかって助けてくれる。人徳としか言いようがない。
その第一は日本事務器時代の部下や仲間たちである。15人が集まって1人1万円ずつ出し合い、半年ごとに15万円のカンパをしてくれるようになったのである。
Kさんが涙したことは言うまでもない。が、これは稀有のことである。
会社を辞めて20年にもなろうというのに、いまだに忘れられていないというのは、やはり「人儲け」の達人としか言いようがない。
そんなある日、Kさんは町中でばったり、日本事務器時代の後輩に出くわした。その後輩は若くして脱サラし、会社を興したが、そのときKさんは30万円ばかり出資という名の応援をした。
Kさんの境遇を知るや、後輩はその場で銀行から30万円をおろし、返すと同時に「先輩、私の会社はシステムエンジニアリングのソフトをつくっています。手伝ってくれませんか」という。
Kさんはいま、後輩の会社の一室を借り、ソフト開発に大わらわである。社員ではない。あくまでも社中社であり、Kさんは一人社長である。
昨年初めて開発したソフトはすでに数千万円の売り上げがある。次々に新ソフトを開発し、もう一度、社中社から社外社に戻りたいKさんである。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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