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ブログ・野口 誠一
第179回:出店後も順風満帆
2008年7月25日
Tさんが「商売にならない地区」で成功したことは、たちまちスーパー業界の評判を呼んだ。と同時に出店依頼が相次いだ。
やがて彼は2号店をオープンし、3号店へと着手していく。が、このとき彼の手持ち資金は500万円にすぎなかった。これでは見積もりでおよそ1億円となる投資などとても無理。
が、Tさんは諦めきれない。というのも、その地域には食料品中心のコンビニやスーパーがなく、地元住民からも出店の要請がきていたからである。
その頃、彼は市の物価対策協議会や青年会議所のメンバーでもあったから、地元の声を無視するにしのびなかった。
それに、立地は地下店舗でベストとは言えないものの、食料品を中心に展開すれば、周りに競合店がないだけに、採算のとれる可能性は十分にあった。
そこからTさんは持ち前のアイデアと行動力を発揮していく。まず、取引先の肉屋や魚屋に声をかけ、店内への出店を誘った。
その呼びかけに3人が応じてくれ、各自1000万円の出資で3000万円を集め、残りは金融機関を駆けずりまわり、ついに3号店のオープンにこぎつけた。
開店初日、この3号店はなんと800万円も売り上げた。その後もコンスタントに1日250万円から300万円の売り上げが続き、以後の数年間というもの、彼のスーパー経営は順風満帆に推移していく。
その間、Tさんは業績が順調ということもあって、青年会議所の活動にのめり込み、いささか経営を軽んじたかもしれない。
砂糖にアリが群がるように、儲かるとなれば新規参入が相次ぐ常識を忘れていた。毎日毎日、300万円を売り上げる3号店の繁盛を、ジッと指をくわえて見ている業者など、あろうはずがない。
やがて強力なライバルが次々に現れるのだが、彼はまだ、そのことに気付いていなかった。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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