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ブログ・野口 誠一
第192回:バブル経済に躍る
2008年10月24日
八起会の再起道場のスローガンは「形の再起より心の再起」である。自分の失敗を真摯に反省し、その原因を突き止め、二度と失敗しない「心づくり」が先決だからである。わが会員の1人で、見事にその「心の再起」を果たした実例がある。それを紹介しよう。
東京・両国の大手衣料問屋の長男に生まれたAさんは、大学を卒業すると同時に父親の仕事を手伝いはじめ、39歳の若さで3代目社長となった。
時あたかもバブルの上り坂で、Aさんはわずか5年で年商15億円を150億円へと驚異の10倍増を達成した。むろん、そこに彼の非凡な経営手腕があったことは言うまでもない。
Aさんはアイテムをベビー用品の一点に絞り、ひたすらブランドの信用力を高めていく。それが奏功し、やがて営業マンが出向かなくても注文が殺到するようになった。
そこでAさんは卸しの重点を、小売りからスーパーなどの量販店へ移していく。これが図に当たった。バブル景気と相俟ったこともあるが毎年、売上高が倍々で伸び、急成長を遂げていく。
その間、Aさんは七階建ての本社ビルを新築し、大阪と名古屋に支社を開設し、ピーク時には社員50余人、パート・アルバイト100余人を擁するまでに業容を拡大した。
しかし、やがてバブルがはじける。思えばすさまじいバブルだった。大企業がこぞって本業を忘れ財テクに走り、株と土地投機に狂奔した。そこへ銀行が湯水のごとくマネーを突っ込み、日本中がバブル列島と化した。
が、それをバブルと気付いた企業人、経営者は1人もいなかった。所詮、キンギョは終生、自分が水槽の中だとは気付かない。水槽が壊れたとき、はじめて気付く。残念ながらAさんも、そのバブルに煽られ、翻弄された1人であったかもしれない。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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