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ブログ・野口 誠一
第195回:恨みからの解放
2008年11月14日
Aさんの夜の散歩が続く。そんなある日、奥さんがAさんの上着の内ポケットからサバイバル・ナイフを見つけた。奥さんは瞬時にすべてを了解した。
それからというもの、片時もAさんの傍を離れず、夜の散歩にもついていく。叱られても追い払われてもついていく。夫を犯罪者にしたくない、その一心でついていく。
そしてとうとうAさんが根負けした。その根負けは同時に、彼が憎悪地獄から解放されたことをも意味していた。奥さんの愛情と献身とおかげである。
恨みつらみが消えて空っぽになったAさんの心に、徐々に反省の念が満ちていく。
自分はバブルに乗って急成長しただけではなかったか。それを経営手腕と取り違えたのではなかったか。バブルもその崩壊も、そしてその後の新しい変化も、何一つ先見できなかったのではなかったか。(Aさんは最後まで社員を1人も解雇できなかった)
もろもろの反省材料に衝き上げられ、Aさんは苦しむ。が、その苦しみは自己改革の苦しみ、明日へ向かっての苦しみだった。
後悔は昨日に張りついたまま動こうとしないが、真の反省は明日へ向かって新しい出発を促していく。Aさんも例外ではなかった。
その頃、奥さんがパートに出て生活を支えていた。何よりもまず、その負担を軽減する必要がある。次に、弟夫婦に預けている3人の子供を引き取らなければならない。いっしょに暮らしてこその家族である。
そのためにはAさんに収入がなければどうにもならない。彼は知り合いや昔の仲間、そしてハローワークへ日参した。
しかし日本経済はどん底期を迎え、新卒でさえ「氷河期」といわれるほどの就職難にあり、Aさんの収入の道は遠く険しかった。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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