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ブログ・野口 誠一
第241回:バブルに浮きバブルに沈む
2009年10月23日
営業すればするほど赤字が積み上がっていくなかで、Yさんは徐々に平常心を失っていく。無理もない。世はバブルのまっただなか、どこもかしこも景気のいい話ばかりである。サラリーマンや主婦までが株式投資に走り、ひと儲けもふた儲けもしているのに、Yさんだけが資金繰りに追いまくられるとあっては、平常心の保ちようもない。
ついにYさんは賭けに出た。手持ちの資金をかき集め、借りられるだけ借りまくり、株式投資に乗り出していく。はじめのうちは笑いが止まらないほど儲かった。買う株、買う株が値上がりしていく。まさにバブルである。
しかし、彼はそれを自分の手腕と錯覚し、マネーゲームにのめり込んでいく。彼だけではない。銀行も大企業も本業を忘れ、土地転がしやマネーゲームにうつつをぬかし、バブルをあおりにあおった。
しかし、ほどなくバブルがはじける。土地の流動性はピタッと止まり、株価も4万円を目前にして天井をつけ、以後、下落の一途をたどっていく。長期デフレ不況と失われた15年の始まりである。
Yさんは事ここに至ってもあきらめきれない。株価の「反転」を信じ、サラ金、街金、ヤミ金の間を駆けずりまわり、いたずらに借金の山を築いていく。その山が1億5000万円を超えたところで、ついに万策尽きた。
Yさんが八起会へ相談にみえたのは、そんなときである。しかし、どうこうなる数字ではなかった。株の借金のほかに本業の借金もあり、その本業も先細りとあってはどうにもならない。結局、会社の破産と自己破産を同時に申請するしかなかった。
負債額は2億3000万円。ついにYさんは12年間の経営にピリオドを打った。平成5年のことである。バブルに浮きバブルに沈んだ典型的ケースと言っていい。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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