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ブログ・野口 誠一
第252回:夫唱婦随の再起へ
2010年1月22日
平成6年、倒産。自宅を失ったNさんは奥さんと2人、木造アパートの6畳2間へ引っ越した。あとでわかったことだが、Aは薬局へ取り立てにきた金融ブローカーを社長に立て、会社を設立していた。要するに、初めからNさんをターゲットにした計画的詐欺だったのである。
病院を辞めてからAに何があったか知らないが、いくら恨んだところで、すべて後の祭りである。虚脱状態のNさんに奥さんが言った。
「短い間だったけど、自分の薬局を持てて幸せだったわ。あなた、ありがとう。いい夢を見せてもらったわ」
この言葉はNさんを奮い立たせるに十分だった。というより、奮い立たざるを得なかった。せっかくの自宅は人手に渡り、2台あった高級車もいまはない。何よりも、奥さんの宝石類を一つ残らず売りとばしてしまった。そして、いまはわびしいアパート暮らし。Nさんは奥さんに再起を誓った。
「もう一度、薬局を開く。頑張って、働いて、自己資金で開く。銀行と手形には二度と手を出さない。何年かかるかわからないが、必ず開く。それまで待ってくれ」
不幸中の幸いだったのは、2人に子はなく、2人とも薬剤師の資格を持っていたことである。さっそくNさんはドラッグストアに、奥さんはスーパーの薬局に勤めはじめた。むろん、収入は普通の勤め人よりはるかにいい。2人で働きながらも生活費はぎりぎりまで切り詰め、せっせと貯蓄に励んでいく。
そして8年後の平成14年、Nさん夫婦はついに念願の薬局開業にこぎつけた。
その後もNさんは薬局を奥さんに任せ、自分は勤め続け、さらに4年後、もう1軒、薬局を開いた。夫婦で1軒ずつである。目下、両方とも業績は順調である。夫唱婦随の再起と言っていい。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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