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ブログ・野口 誠一
第284回:土地、建物を担保に
2010年9月10日
その頃、わが家は二人の娘の大学の授業料や、家のローンなどに追われており、とても株式投資にまわすお金などありませんでした。私は口をすっぱくして何度も主人にブレーキをかけました。
「お父さん、株、始めたの。いまのわが家にそんな余裕なんてないでしょ。何かあったらどうするの、絶対やめてくださいね」
でも、主人の答えはいつも同じでした。
「わかってるよ。自分の小遣いの範囲でやるから、家計に迷惑はかけないよ。あまり干渉しないでくれ」
私は不安でたまりませんでした。このとき、主人50歳、私は46歳でした。あとでわかったことですが、そのとき主人はすでに土地、建物を担保に、本格的に株式投資を始めていたのです。やがて毎朝、ファックスで何枚もの先物取引関係の資料が届くようになりました。そしてある日、主人が言いました。
「お母さん、娘たちの簡易保険、解約できないかい。この資金をきょう中に入金しないと大変なことになるんだよ」
驚きました。主人はすでに、娘たちの学資保険をあてにするところまで追い込まれ、正常な姿ではなくなっていたのです。あんなに家族思いだった主人が、どうしてこんなに変わってしまったのだろうか。これは私たちに対する裏切りではないのか。名義こそ主人名義だが、この家は家族みんなのものではないのか。それを私たちに相談することもなく担保に入れるなんて。こうなった以上、離婚するしかないのではないだろうか。そんなことを何度も何度も自問自答しました。
でも、投資の目的を聞くと、主人は「金持ちになって、みんなにもっとよい生活をさせたかった」と言います。そのような動機だったのかと思うと、とても複雑な気持ちになりました。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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