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ブログ・野口 誠一
第285回:自己破産で一文無し
2010年9月17日
やがて、厳しい現実が襲ってきました。主人は夜も眠れなくなり、「苦しい。胸が苦しい。生命保険でなんとかしたい」などと、とんでもないことを言い出すようになりました。そんな主人の背中をさすりながら、私は「大丈夫よ。あしたも仕事があるんだから、早く寝ないとダメですよ」と言うしかありませんでした。
そんな日々が長く続きました。でも、一晩中寝られなくても、主人は朝早く青白い顔で出勤して行きます。そのうしろ姿を見送りながら、「必ず帰ってきてね。娘たちも待っていますからね」と祈るしかない私。ひょっとして電車に飛び込んだりしないだろうか。そんな電話がかかってこないだろうか。そうした不安と胸苦しい毎日が続きました。
主人のプライドもあり、田舎の兄弟には知られたくないだろうと思いつつも、私一人ではとても処理できる問題ではありません。そこで、いちばん親しい主人の姉に打ち明けました。そしてその忠告に従い、自己破産の手続きに入りました。借金の取り立てなどで会社に迷惑をかけるわけにもいきませんから、すべてを会社に打ち明けて退職しました。
二人の娘にとっては、青春をすごしたわが家がなくなるのですから、父親を恨みたい心境だったと思いますが、いっさい恨みごとは言いませんでした。それがかえって私の心にはこたえました。隣近所への挨拶もそこそこに、二十数年すごしたわが家をあとにし、小さなアパートへ引っ越したときの寂しさ、なさけなさはなんとも言いようがありませんでした。
その日から苦しい、厳しい生活が始まりました。何もかも失ってしまったのですから当然です。「主人は絶対に立ち直る人」と信じつつも、切り詰めた生活のなかで不安はつのります。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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