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ブログ・高橋 聡
第298回:令和時代の運送業経営 歩合設計編(95)
2025年9月30日
【残業時間対策編】95
「頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今号から「歩合給設計編」として時間外上限規制(2024年問題)への給与設計面での対応について解説してまいります(その5)。
1.適正な歩合給とは
前号で歩合給の性質が問題になる事例を解説しました。そのなかで、「金額基準」の事例についてさらに説明してまいります。例えば、総支給額は日数(日給〇〇円×勤務日数)もしくは歩合(〇〇便×運行回数)計算で求め、その総支給額から基本給、時間外手当等を差し引き「歩合給」を求める、という方法で計算している事例が多くみられます。
この場合、「歩合給」の基準が不明瞭になります。なぜならば総額から割り振っただけの「歩合給」であるため、「歩合給」基準(運賃収入や距離数等)が何であるか説明できなくなってしまいます。
つまり掛け率や単価が月毎に変動することとなるため問題があります。
また、この方式は残業時間数が前月に比べ長くなり運賃収入が同じであった場合には、割増賃金増加分について歩合給から差し引く、といった計算結果になります。このような計算方式は「時間外労働が増加しても総支給額が変化しないこと」「差し引きで求めた歩合給の基準が不明瞭となること」により、支払い済の時間外手当額、歩合給が「所定内手当」と評価され、総支給額を算定基礎として別途割増賃金を支給することを余儀なくされる必要が生じるので、最大限に注意する必要があります。
2.改善方法
まず、上記金額基準で名称・性質を「歩合給」としている事例については、総支給額ではなく「歩合給」のみを求める計算式を導入し、その結果と所定内、手当、割増賃金などを積み上げて総支給額を算出する仕組みにする必要があります。また、「日数」基準になっている場合は「日給」扱いとなるため、〇〇コース1運行当たり〇〇円という計算式にする必要があります。
「日給」と評価された場合は「日給額」を1日の所定労働時間数で割り単価を算出、掛け率は125%(60時間超は150%)で計算する必要があります。以前は歩合給そのものが争点となる係争が多くはなく、今でも古い方式のまま継続している会社が散見されます。24年問題を契機に「時間管理」が注目されその延長として給与制度が問題となるステージになってきているため注意が必要です。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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