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ブログ・重田 靖男
第21回:「相談は解決しました」
2007年3月22日
東京城南大学の高橋教授といえば、物流研究者として第1人者であり著書も多いので、大久保もよく知っていた。セミナーや講演も聴いたことがある。大久保は改めて川田の人脈の広さに関心していた。川田が時折、物流の団体の集まりや学会に顔を出すのも、こうした人脈作りに役に立っているのだろう。
「今度、君も高橋教授に紹介するから、いろいろ相談してみるといいよ」
川田は、そう言って一連の話を終わった。
「ところで大久保、何か相談があったんじゃなかったっけ」
「ええ、相談は2つあったんですが、その両方とも解決しました」
「ん?」
「実は、1つはSPF─50の追加生産の件、もう1つは新しい組織変更で、なぜ経営企画本部の中にSCM推進部という組織を置いたのか疑問があったので…。だからもう両方とも解決したわけです」
「そうか。よし、それなら河岸を変えるとしようか。お〜い、女将、帰るよ」
「あら、お帰りですか。いつもありがとうございます。少しは涼しくなるといいですねえ」
「女将、あそこに寄るよ、『まゆ』にさ。電話しておいてくれ」
「まあ、ありがとうございます。きっと喜びますわ。向こうも、このところ暇だって言っていましたから」
お忘れの読者もあろう。『まゆ』というのは『笹もと』の女将の娘がやっている大衆スナックである。珍しく、川田はそこで歌でも唄おうと思っているのだろう。そういえば大久保も、このところ忙しくてしばらく行ってなかった。
大久保は、何かほっと肩がほぐれたような気がした。
外に出ると、まだむっとした暑さが残っていた。2人は上着を腕に抱えて、ネクタイを緩めたまま、勝手知った道をゆっくりと歩いた。
「いや、しばらくご無沙汰だからというのもあるんだけど、例の市場調査の御礼にね」 と川田は笑って言った。この記事へのコメント
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筆者紹介
重田 靖男
東京ロジスティクス研究所
1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。
【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員 -
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