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ブログ・重田 靖男
第24回:「ぼつぼつ結論を出したい」
2007年7月5日
そうではなかった。会社を退けると、彼は手当たり次第に友人達と会い、商品化のためのデザインや市場性、販売のターゲットについて意見を求めていたのである。彼はこの商品に高度なビジネスユースは考えていない。それよりも、若い人たちが気軽にマスコット感覚で身に付け、それでいてインターネットを利用したコミュニケーションができる、そんなアイテムに仕上げたいと思っている。だから今日も弟のガールフレンド達に意見を聞こうと、原宿、表参道の裏手にあるイタリアンレストランで待ち合わせをしている。
「かなり、煮詰まってきたから、きょうはデザインコンテを幾つか持って行こう。ぼつぼつ結論を出したい」
彼女たちの評判はすこぶる好評であった。
「かわいい!」「私もこんなの欲しい」「他のキャラクターはないの」「文字盤は変えられないの」「ケイタイとどう違うの。でもおもしろ〜い!」「おしゃれよねえ」等々。
彼のコンセプトは、いつの間にか腕時計が占領してきた人間の手首に、時間を知る機能以外に何か新しいパフォーマンスが欲しいということだ。市場性は確認できた。
「行ける!」と思った。ただし、幾つかのパターンが選択できるシステム商品にしよう。顧客が自分で選択できる仕組みがいい。結論が出た。
「博之、あなた一体何してるの。毎日のように若い女の子たちを誘って遊び歩いてるらしいわね」
どうも弟のやつが何やら告げたらしく、とうとう母親にもおかしな目で見られるようになってしまった。
こうなっては、いつまでも黙っておくわけにもいくまい。ちょうど、申請していた特許も認められたし、それを聞きつけたある大手の時計メーカーから、アイディアを売って欲しいとも言ってきていた。
博之は、もちろんアイディアを売る気はない。彼は父親のように、自ら事業として展開できないかと最初から考えている。こと、ここに至っては両親にも打ち明けて、特に父親には何かと相談に乗ってもらいたいと思っていた。 -
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筆者紹介
重田 靖男
東京ロジスティクス研究所
1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。
【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員 -
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