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ブログ・鈴木 邦成
クラウド・コンピューティングの時代へ
2008年11月1日
ハイリスクハイリターン
涼しく秋らしい日が続いています。世界同時格安や円の独歩高などもあり、日本経済の今後の行方は相変わらず不安です。
そうした不安定な世相を反映してか、最近はFX(外国為替)のウエブ取引口座の開設者が増えているようです。ハイリスクな取引となりますがうまくいけばリターンも大きいことが魅力となっているようです。
インターネットの新しい流れ
IT革命からウエブ2.0を経て、インターネットはますます進歩しようとしています。最近はクラウド・コンピューティングとかSEO(サーチ検索最適化)などが注目されています。
拙著『絵解きすぐできる商品管理・物流管理』(日刊工業新聞社、遠藤八郎・鈴木邦成共著)の中でも取り上げたSaaS(サービス・アズ・ア・ソフトウエア)などの普及によりインターネット上で潤沢なインフラが提供され、それはあたかも雲(クラウド)のように見えるということからクラウド・コンピューティングという名がつけられました。
インターネットの発達とその法則
インターネットのこれまでの発達の過程において、さまざまな法則が経験から引き出されてきました。
20世紀の半ばのまだインターネットが登場するはるか以前には「グロッシュの法則」と呼ばれるコンピュータに関する経験則が情報通信の世界においての重要な考え方でした。
グロッシュの法則とは1940年代に、コンピュータのパイオニアであるハーブ・グロッシュが唱えた「コンピュータの性能は価格の二乗に比例する」という法則です。
これはあるコンピュータが別のコンピュータの倍の価格なら、処理能力は4倍になるという理論です。すなわち「大型コンピュータや大型システムを買う方がノートパソコンなどを買うよりも有利である」という考え方です。
実際、1970年代くらいまではほぼその通りの状況でした。大型汎用コンピュータが情報通信システムの中心的な役割を演じていたのです。
ところが、1980年代になると大型コンピュータと伴走するかたちでパソコンが大きな役割を占めるようになるとグロッシュの法則の役割は低下することとなりました。
そしてグロッシュの法則に代わり「ムアの法則」が大きな注目を集めました。ムアの法則とは、インテルの共同創業者ゴードン・ムアが唱えた法則です。「半導体の性能は2年に倍の割合で向上する」という法則です。
ムアの法則によると、マイクロプロセッサーを使用した量販システムによってIT業界は独自のシステムよりもはるかに速い速度で右上がりの成長曲線を描くことが可能になります。
事実、1980年代になると、パソコンなどのマイクロプロセッサーを使用したシステムの価格性能比が秀でてきて、パソコンがIT社会の基本ツールとなる道筋が見え始めてきました。ムアの法則の通りに、マイクロプロセッサーのスピードが年々、2倍以上の速さとなったのです。
その結果、低コスト化も技術革新も大きく進展しました。大型コンピュータに力を入れる企業よりもパソコンに力を入れる企業が台頭してきました。
ただし、1990年代の半ば以降、パソコンがそれ自体の機能で完結することなく、インターネットとの連結により外部ネットワークを自由に取り入れられるようになってくると、ムアの法則よりもボブ・メトカフ氏の提唱した「メトカーフの法則」の持つ意味合いが大きくなってきました。
メトカーフの法則とは、「ネットワークの価値はユーザー数の増加に対し急激に上昇するが、ネットワークのコストは直線的にしか上昇しない」という法則です。パソコンを起点とする高度ネットワーク社会の到来によって、メトカーフの法則が大きな説得力を持つこととなったわけです。
このようにインターネットの法則に関する基本的な流れは、大型コンピュータ中心のグロッシュの法則から、パソコン主流時代のムアの法則、さらにネットワーク中心の時代のメトカーフの法則となってきたのです。
そして多くの専門家は、今後はムアの法則とメトカーフの法則が連動した「コンテンツの時代」となり、さらに多くの新しいインターネットの経験則が間違いなく生まれてくると考えています。この記事へのコメント
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筆者紹介
鈴木 邦成
物流エコノミスト・日本大学教授
国際政治経済、国際文化に関する造詣が深く、記事・論文・著作多数。
欧米諸国の地域経済統合の流れを、物流・ロジスティクスの観点から追求している。
国際物流に関するセミナーやロジスティクスに関する講演会での講師歴は多数。 -
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