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ブログ・鈴木 邦成
第35回:SCMのルーツ
2005年7月10日
1980年代の米国のアパレル業界は海外からの輸入衣料品の激しい攻勢にさらされていた。
そのため、米国のアパレル業界は世界的なコンサルティング会社であるカート・サイモン社に問題点の調査を依頼した。
カート・サイモン社の分析によると、アパレル業界の競争力は細部だけを見るととても優れていた。
ただ、全体のバランスや効率が悪くなっていた。売れ残り、欠品、過剰な在庫などが問題点として指摘されたのである。
そこで同社の報告書をもとにアパレル業界が導入した手法がQR(クイック・レスポンス)だった。
QRとは「商品の流通過程のムダを省き、消費者により安価な商品を提供すること」。
これがSCMのおおもとの考え方とつながっていった。
QRの考え方はほかの業界にも広まった。米国の産業界全体でQRを推進する動きが活発となった。
加工食品業界などではECR(効果的な消費者への対応)と名を変えた。ECRもQRも基本的な考え方は同じだ。
またほぼ同じころ、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が「価値連鎖」(バリューチェーン)という概念を提唱して、注目を集めた。価値連鎖とは「ビジネスの一連の流れをさまざまな付加価値で結びつけていく」という考え方だ。
当初は人事や総務、庶務などの社内業務を関連づけていくことに重きがおかれた。その後、「価値連鎖」は社外業務にまで拡大されていった。製造業、卸売業、小売業、物流業、消費者を全て含めて考えられるようになったわけである。やがてこの価値連鎖の考え方がQRの流れと合流、「供給連鎖」へと進化したのであった。この記事へのコメント
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筆者紹介
鈴木 邦成
物流エコノミスト・日本大学教授
国際政治経済、国際文化に関する造詣が深く、記事・論文・著作多数。
欧米諸国の地域経済統合の流れを、物流・ロジスティクスの観点から追求している。
国際物流に関するセミナーやロジスティクスに関する講演会での講師歴は多数。 -
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