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運送会社
上がり続ける燃料価格 進まぬ運賃転嫁
2007年12月27日
原油価格の高騰が続き、燃料コストが運送事業者の経営を圧迫している。航空機などでは、燃料サーチャージ制の導入で運賃への転嫁が進んでいるが、トラック業界では、その動きは依然として鈍い。
軽油価格が高い水準で推移する中、事業者の負担も限界に近づいているとの声も多い。こうした軽油価格の上昇に対応するには運賃転嫁が最重要課題だが、運賃転嫁に成功したケースは、できないケースに比べ、圧倒的に少ないのが実情だ。
東京都多摩市の運送事業者は、30年来の取引関係にある荷主から、ようやく運賃転嫁のオーケーが出たという。同社は1年半前から交渉を続けてきたというが、それがようやく実った。
その理由について、同社社長は「荷主が調子いいからだ」という。ここ数年、業績が悪かった荷主だったが、今期は好業績となり、収支が大幅に改善されたという。その結果、交渉していた燃料コストの転嫁に、荷主担当者も理解を示し、燃料のコスト増分の運賃への転嫁が認められた。さらに同社は、今後の燃料コストについて、サーチャージ制の導入にも成功した。
「リッターあたり100円を基準にして、運賃へ転嫁することが決まった」というが、当然下がった場合は、逆に運賃は現状よりも値下げとなる。
ただ同社は、「収支が燃料コストによって、大きく左右されるのは問題」とし、「今の時代、燃料価格に左右されない経営ができるのは、大きなメリットがある」と話す。
また、埼玉県内の事業者も、運賃転嫁に成功した。同社は「輸送協力会社が足並みをそろえて荷主に要請したところ、荷主が運賃を上げてくれた」という。1社ではいえなかったことを、同業他社と協力して交渉することで、運賃値上げに成功したケースだ。ただ、「それでも完全に転嫁するには程遠い」というのが現状のようだ。
しかし、こうした運賃転嫁ができたのは、まだまだ少ないケースで、転嫁できないでいる事業者が圧倒的に多い。
埼玉県の事業者は、「まったく転嫁できていない」とした上で、「小売店で各種商品の値上がりがはじまってきており、これが物流業界にまで波及するには、まだ時間がかかると思う」と、転嫁の難しさを話す。
また、同じく埼玉県の事業者は、「大手物流子会社に値上げをお願いしたが、定期便1台だけ値上げしてもらった」というものの、「ほかはすべてだめ。物流子会社はしぶい」とこぼす。
さらに、「交渉ではなく、燃料が上がったという話をしただけで、仕事を切られた」(神奈川県厚木市の事業者)というケースも出ている。運送事業者にとっての運賃転嫁は、荷主にとって物流コスト増を招くだけに、荷主の業績によって左右されやすい。
建材関係を輸送する千葉県内の事業者は、「燃料コストの運賃転嫁は、話もできない状況」と嘆く。建築業界はいま、建築基準法改正のあおりで建築確認申請がおりない。そのため、着工減が続いており、荷動き自体が減少している。同じく、建材輸送をメーンにしている東京都内の事業者も、「荷主が厳しい状況の中で、運賃転嫁など、おくびにも出せないよ」と話す。
単に、燃料コストのアップ分を運賃へ転嫁するという考えではなく、総合的に運賃の値上げを申請する動きもある。
「メーンの荷主企業のうち、飲料品関係の荷主は安定した仕事で利益がまだ出ているので、値上げはお願いしていない」という埼玉県の事業者は、「重量物関係は要請しているが、向こうの社長のところで話がストップして、答えが返ってこない」という。同社の場合、「軽油の値段だけで値上げをお願いすると、下がった時に困るので、サービスの向上などを含めた形で運賃アップを求めている」という。ただ、現状では、「荷主側もコスト増に苦しんでおり、簡単にはいかない」ようで、「粘り強く要請していく」としている。
また、原油価格の上昇を、先物取引でリスクヘッジする事業者も存在する。
埼玉県の事業者は、「先物でヘッジしており、1バレル100ドルまでは大丈夫だ」と話す。同社社長は、「油は燃料というよりも、もはや投機の対象に近くなってきている」と指摘している。
原油高の影響を受け、燃料コストが増大する運輸業界。すべての事業者にとって、運賃転嫁は必至の状況ではあるが、それがなかなか進まず、明暗が分かれてきている。
輸送サービス、輸送品質の向上には、適正運賃の収受は不可欠といえる。それだけに燃料コストの増大に対し、運賃転嫁は事業者にとって当然だが、それが難しいのも、また実情だといえる。
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