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運送会社
JR貨物・伊藤会長インタビュー「奇跡の赤字脱出」
2008年1月17日
国や企業がCO2削減に本格的に取り組み始め、「環境にやさしい」鉄道輸送が見直されている。輸送単位あたりのCO2排出量が自家用トラックの18分の1、営業用トラックの8分の1という点が注目され、CSR(企業の社会的責任)の面からも基幹輸送を鉄道輸送にシフトする企業が増えてきた。
社長就任後3年目で、8期連続赤字のどん底にあった同社を黒字会社に転換。以降、安定的な経常黒字路線に乗せ、昨年6月に代表取締役会長に就任した伊藤直彦氏に現状と今後の展開などを聞いた。
―93年度から00年度までの8期連続赤字を立て直した要因は?
「発足当初から数年間はバブル経済で黒字を計上していたが、バブル崩壊で一気に崖っぷちに立たされた。旧国鉄体質も残っており、とくに営業面では顕著だった。『運べばいい』『荷物を取ってくればいい』との考え方が根強く、『いくらで運ぶ』という概念がない。荷物をどのように運ぶかという収支を考えた問題を前提とした営業ができていなかった。99年の社長就任後、『コストを常に念頭に営業』するよう訴え続けた。それが奏功したと思う」
―国鉄の分割民営化では「安楽死」論まで出た貨物鉄道部門に自ら「志願」したと聞くが。
「75年の有名な『スト権スト』以降、多くの荷主がトラックに切り替えていった。みんな『鉄道などダメだ』と言っていた。『それじゃ、やってやろう』という気になり(JR貨物の)設立準備から携わった。JR貨物として発足後、かつての顧客を訪ねても『国鉄とそう変わらないだろう』『またストライキがあったりするんでしょ』とけんもほろろだった。そのため当初、『四ない』運動を社内で展開した。『ストライキはしない』『運賃は上げない』『コンテナなどの不足は起こさない』『営業所(貨物駅)は当分減らさない』を金科玉条に信頼回復に努めた」
―それが今、環境問題の「追い風」もあり、積極的に鉄道にシフトする荷主が増えている。
「トヨタの専用線をはじめキヤノン、松下電器など優良企業が相次いで自社の物流に鉄道輸送を組み込み始めた。国鉄時代に失った信頼をようやく取り戻しつつある。国鉄時代のピーク時には年間2億tを扱っていた。現在は3660万t強。扱い量でいけばまだまだ少ない」
―新型車両開発を始め、「スーパーグリーン・シャトル便」などサービス面拡充にも力を入れているが。
「モーダルシフト促進に向け、『サービス向上』と『コスト削減』に挑んでいる。取り扱うすべてのコンテナに5年がかりでIDタグを付け、IT―FRENS&TRACEシステムも構築。現在、携帯電話から荷物情報を取ったり、予約することが可能になった。『エアより安く船より速い』をセールスポイントとした『上海スーパーエクスプレス』など、国際物流への取り組みも強化しているところだ」
―トラックとの関係は?
「1000kmを超えるような長距離輸送では鉄道のほうが環境、コストの両面ではるかに都合が良い。今後、ますます環境規制は厳しくなり、大型トラックのドライバー不足問題も顕在化するだろう。『トラックがしなくてもいい分野』『鉄道輸送にふさわしい貨物』をターゲットに輸送量を拡大したい」
【会社概要】
伊藤直彦会長、小林正明社長。87年4月1日に設立。資本金190億円、社員数7182人。06年度決算は売上高1637億円、経常利益15億円と6期連続で経常利益を確保。07年度は売上高1693億円、経常利益20億円を見込む。
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