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射界
2017年4月10日号 射界
2017年4月14日
「懸命に生きることは賢明に生きることだ」と、ある本にあった。生まれて間もない幼児さえ自力を振り絞って懸命に生きている。成長するに従い自らの生きる力を本能的に悟り、長ずるに伴って知識と教養を積み重ね、加えて社会の荒波に揉まれながら知恵をつけていく。こんなプロセスを経て人は懸命に生きていくのだ。
▲生きていくなかで、予想もしない渦に遭遇する。生きるうえでリスクとなる渦もあれば、成長に必要不可欠な渦もある。リスクを含んだ渦に巻き込まれると人は抜け出ようと手足を動かしてあがくが、渦の力には勝てずに身を渦中に沈めることもある。幸いにリスクを秘めた渦から抜け出れば活路は開かれる。知恵を絞って懸命に生きるに賢明であれと願って、知恵をめぐらすのだ。▲大雨の後、舗装されているとはいえ道路の窪みに水溜まりができる。いくら釣り好きの人でも、まさか、そこに釣り糸を垂らすほど愚かではない。ましてや水溜まりに魚が棲むまで、じっと待つ人などいない。なぜなら人は、どんな場合にも自らの行動の先を予見して生きているからだ。少しでも賢く生きたいと思えば当然で、ムダ足を踏むことを避け、正確な判断を下すだろう。
▲賢く生きるとは、自尊心を持って自らの品位を高めることでもある。人に恥じ自らに恥じて天にも深く恥じる心――それを持つことだが、それを誤解して自惚れ(うぬぼれ)に走り、揚げ句にそれを自尊心と錯覚してしまう。錯覚は実力以上に自分を過信することでもあり、当人は得意満面だが他人は違う。この隔たりが恥じる心を失わせ、いたずらに人々を困惑させるだけになるようだ。
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